タバコを吸いたいと思ったきっかけは「家族」?
タバコが健康に及ぼす悪い影響については多くの人が知るところ。
なのになぜタバコを吸う人がゼロにならないのか?
タバコの害から健康を守るために世界では新たな試みがなされているようです。
喫煙は「予防できる最大の死亡原因」?
タバコの有害性については、いまさらいうまでもないでしょう。
例えば、肺がん、食道がん、胃がんなど多くのがんはいうに及ばず、脳卒中、心筋梗塞、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、2型糖尿病、腹部大動脈瘤、歯周病など、まさに頭からつま先までといっていいほど多くの病気との因果関係が科学的にも明らかになっています。
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、喫煙は「予防できる最大の死亡原因」と表現しています。
にもかかわらず「習慣的に喫煙している人(毎日または時々・20歳以上)」は男性で27.1%、女性が7.6%です(厚生労働省「国民健康・栄養調査報告/令和元年」)。
年代別では男性の40歳代がいちばん多く36.5%、ついで30歳代の33.2%。女性は50歳代がいちばん多く12.9%、40歳代が10.3%、30歳代が7.4%、20歳代が7.6%となっています。
受動喫煙で年間1万5,000人が亡くなる?
愛煙家にとっては国を挙げての禁煙の動きにさぞかし辟易していることでしょう。「喫煙は個人の自由」だし「自分の命のことは自分で考える」といった意見もあるようです。
確かにその通りなのでしょうが、問題なのは「副流煙」による「受動喫煙」だといわれます。
ニコチンやタールなどの有害物質を含んだ副流煙を吸い込む受動喫煙によって、喫煙者の周囲の人が健康被害を受けるというのです。
厚労省(e-ヘルスネット)によれば、副流煙による肺がんのリスクは1.28倍、心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクは1.3倍、脳卒中のリスクは1.24倍といわれます。
また、ヘビースモーカーの夫をもつ女性の肺がんによる死亡のリスクは約2倍だそうです。
さらに受動喫煙との関連が確実といわれている肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)の4つで、年間に約1万5,000人が亡くなっているということです。
タバコを吸うきっかけは「家族」が半数?
こうした副流煙による家族や周辺への健康被害に加えて、喫煙の習慣にはもうひとつ別の問題がひそんでいるように思えます。
喫煙の連鎖ともいえる問題です。
国立がん研究センターの調べによると、「たばこを吸ってみたいと思ったきっかけ」(複数回答)でもっとも多かったのは「家族が吸っていて身近にあった」という回答で52.0%、続いて「友人や知人にすすめられた」の37.3%、「タバコを吸っている人を見て真似をしたいと思った」26.4%でした。
家族や周囲の人の喫煙習慣が、タバコを吸うきっかけになっていることが容易に想像できます。喫煙率を下げるには、家族や周囲の人がタバコを「見せない」「吸わない」ことが重要といえそうです。
毎年1歳ずつタバコの購入年齢を上げる
そんな折、イギリス保健省が「タバコを購入できる年齢を毎年1歳ずつ引き上げる」勧告をまとめたという新聞記事を目にしました(東京新聞/2022.8.10)。
記事によると現在、イギリスではタバコを購入できるのは18歳からなのだそうですが、この勧告が法制化されると18歳から下の世代は生涯にわたってタバコを購入できないことになるのだそうです。
またニュージーランド政府は、2009年以降に生まれた子どもが生涯、タバコが吸えないとする法案を国会に提出したという報道もありました(東京新聞/8.21)。
これって究極の禁煙方法だと思いませんか?
喫煙の連鎖を断つことにもつながりそうだし……。
果たしてイギリスとニュージーランドの今後の展開はいかに?
<参考>
*「喫煙による健康影響」(e-ヘルスネット/厚生労働省)
*「成人年齢とたばこに関するアンケート調査」(国立がん研究センター)
*「たばこ年齢 毎年引き上げを」(東京新聞/2022.8.10)
*「NZ たばこない国へ」(東京新聞/2022.8.21)