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ダイエットだけじゃない。よく噛むことにはメリットがたくさん!

食欲の秋。ついつい食べ過ぎて、体重を増やしてしまった人も多いのではないでしょうか。

安全で簡単にできるダイエット法といえば、やはりよく噛んで食べること。

ほかにも体にいいことがいっぱいあるようです。

 

「早食いは太る」疫学調査でも明らかに

 早食いは肥満の元、と昔からよく言われています、近年は国民健康栄養調査や疫学調査でも早食いと肥満が密接な関係にあることが明らかになってきたそうです。

 たとえばある疫学調査では、早食いの人は現在のBMIが高い傾向にあることがわかったそうです。

 また別な疫学調査では、「早食い」の習慣を持つ人と「お腹いっぱい食べる」習慣を持つ人はBMIが高く、両方の習慣を持つ人はさらにBMIが高い調査結果が出たといいます。

 

 

戦前と比べて噛む回数も食事時間も半分に

 調理済みの食品や口当たりの良い食品が増えて、現代人は昔の人に比べて噛む回数が減ったことが指摘されています。

 食べ物の変化だけに限らず、近年は、スマホを見ながらパソコンを操作しながらの「ながら食べ」をする人も増えて、噛む回数が減っているといわれています。

 遠い昔。弥生時代では食事の際には4000回近く噛んでおり、食事時間も1時間ほどかけていたといわれています。

 時代とともに咀嚼の回数は減って、戦前では約1400回で食事時間は20分程度、現代では、咀嚼回数が約600回まで減少して、食事時間は約10分程度と言われています。

 

 

よく噛むことは肥満治療のひとつ?日本肥満学会の「肥満治療ガイドライン」では、ゆっくり噛む「咀嚼法」が肥満治療における行動療法のひとつとして挙げていて、1回20~30回以上噛むことが推奨されているそうです。

体重増加が気になる人は、まずはよく噛んでゆっくり食事をすることを心がけてみてはいかがでしょうか?

 

肥満防止だけじゃない。知っておきたい良く噛むことの効用

財団法人8020推進財団では「噛む8大効用」として以下の「ひみこの歯がいーぜ(卑弥呼の歯がいーぜ)という標語を紹介しています。

・「ひ」は肥満防止/ゆっくりよく噛んで食べると脳の満腹中枢が働いて食べすぎを防げる。

・「み」は味覚の発達/食べ物をよく噛んで味わうことで食べ物の味がよくわかる。

・「こ」は言葉の発音がはっきり/よく噛むことにより口のまわりの筋肉を使うため、表情が豊かになる。口をしっかり開けて話すときれいな発音ができる。

・「の」は脳の発達/よく噛む運動は脳細胞の働きを活発にする。子どもは知育を助け、高齢者は認知症の予防に役立つ。

・「は」は歯の病気の防ぐ/咀嚼を十分にすると唾液がたくさん出て口の中をきれいにする。この唾液の働きが虫歯や歯周病を防ぐ。

・「が」はがん予防/唾液に含まれる酵素には、発がん物質の発がん作用を消す働きがある。よく噛んでがんを防ごう。

・「いー」は胃腸の機能を促進する/よく噛むことで消化酵素がたくさん出て消化を助ける。

・「ぜ」は全身の体力向上と全力投球/力を入れてかみしめたいとき、歯を食いしばることで力がわく。

(噛むことの効用「ひみこの歯がいーぜ」(8020推進財団 ポスターより)

 

ちょっとした工夫でも噛む回数を増やせる

 よく噛んでゆっくり食べるためには、冒頭でお話したように「ながら食い」をしないことのほかにも、食材を大きめに切ったり、根菜類やきのこ類など食物繊維が多い食べ物や雑穀などを食卓に乗せることも心がけるとよいといいます。

 体にも脳にもいいことがいっぱいある咀嚼の効用。今日からゆっくりよく噛んで、おいしく食事をとることを心がけてみませんか?

 

<参考>

※「しっかり噛んで認知症を予防する」(『栄養と料理』女子栄養大学出版部 2021年8月号 )

※「噛むことの効用『ひみこの歯がいーぜ』」(8020推進財団 ポスターより)

※「ゆっくり食べてみませんか」(労働者健康安全機構 北海道中央労災病院治療就労両立支援センター 2018年1月)

※「早食いと肥満の関係‐食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」e-ヘルスネット 厚生労働省)

 

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。