プラスコラム
PLUS COLUMN

睡眠中の夢の不思議

怖い夢、楽しい夢――みなさんは昨日どんな夢を見ましたか?

夢を見たことは覚えているけれど、夢の内容は起きるとすぐに忘れてしまったという人も多いのではないでしょうか?

今回は睡眠中の夢に関するお話です。

 

謎が多い夢のメカニズム

就寝中に見る夢は不思議ですよね。

夢の中では当然のこととして受け止めているのに、起きてみると奇想天外な夢だったり、荒唐無稽な夢だったり。

また見たい夢があっても、実際には思うように見られないことがほとんどです。

古今東西夢に関する研究は数多くありますが、実はなぜ夢を見るのか、今もって解明されておらず、数多くの疑問が残されているそうです。

 

夢の正体は?

ヒトは睡眠中に脳の中で記憶を整理し、定着させているといわれていますが、夢はおそらくこの記憶情報の整理のために見ると考えられているそうです。

記憶の断片がつなぎあわされて脳の中で新しいストーリーがつくられているから、突拍子もないへんてこな組み合わせのストーリーができてしまうともいわれています。

 

なぜ夢の内容を忘れてしまうのか

夢の不思議は、夢の内容だけではありません。

あれほどリアルに感じた夢の内容も、多くの場合起きてしばらくすると忘れてしまうことです。

起床直後に「こんなにおもしろい夢を見た。誰かに話さなくては」と思っているうちに、夢の内容が思い出せなくなってしまったという経験は、みなさんもあるのではないでしょうか?

でも、いったいなぜなのでしょうか?

 

夢を忘れさせる脳神経細胞があった

新聞などの報道で、この秋、名古屋大学環境医学研究所の山中章弘教授らが眠りによって記憶を消す働きをもつ神経細胞をあきらかにしたという発表がありました。

山中教授らのチームは、マウスを使った実験で、脳の視床下部という部分に存在するMCH神経がレム睡眠中に活動し、記憶を消去する役割があることを見つけたそうなのです。

起きる直前に夢を見てもすぐ忘れてしまうのは、このMCH神経が働くためかもしれないといいます。

MCH神経が記憶に影響を与えるメカニズムが解明されれば、強い恐怖心を伴った経験の記憶がトラウマとして残ってしまう心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療にもつながる可能性があると期待されているそうです。

楽しい夢を見たとき、夢を忘れるとちょっと残念な気持ちになりますが、レム睡眠中に嫌な記憶が消えてしまうのは、おおいに歓迎したいですね。

 

 

<参考資料>

「睡眠中に記憶消す神経『夢忘れた』に関与?」(東京新聞 2019年9月20日付)

 

<参考URL>

*名古屋大学プレスリリース『浅い眠りで記憶が消去される仕組みを解明~なぜ夢は起きるとすぐに忘れるのか~』

http://www.riem.nagoya-u.ac.jp/4/drof1/nr/files/Sci_190920.pdf

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。