プラスコラム
PLUS COLUMN

ドライマウスに悩んでいませんか?

「最近、口が乾いてネバネバする」、「舌がピリピリ痛む」、「クッキーなどのパサパサしたものが飲み込みにくい」、「舌が上あごにくっついてしゃべりにくい」こんな症状はありませんか? それは、もしかしたらドライマウスかもしれません。

口の中が渇いて、さまざまな不快症状が現れます

ドライマウスは、さまざまな原因によって唾液が出にくくなって、慢性的に口の中が乾きった状態になること。正式には「口腔乾燥症」といいます。
唾液は絶えず口の中をうるおして、口の中の粘膜を保護する役割をしています。ですから、唾液が減った状態が続くと、舌の表面がひびわれたり、口の中の粘膜が傷ついて痛むうえに、食べ物の味も感じにくくなります。


また、口の中が渇くことにより発音がしにくい、食べものが飲み込みにくい、口臭が強くなるなど、日常生活を送る上でさまざまな支障が出てきます。さらに唾液の分泌量が減れば口の中の自浄作用が低下するので、歯周病や虫歯、口内炎にもかかりやすくなります。
症状が進むと、話すことも食べることもつらくなるのに、周囲からはなかなかそのつらさを理解してもらえず、病院を受診しても「年のせいでしょう」の一言で片づけられてしまうことが少なくありません。こうした状況が患者さんの悩みをますます深めているようです。

中高年の女性に多いのが特徴

ドライマウスの患者さんの約9割は女性です。若い世代にみられることもありますが、多く見られるのが更年期以降の世代。その背景には、女性ホルモンの低下が大きく影響していると考えられます。
女性ホルモンは、皮膚や粘膜など体のうるおいを保つ働きがありますから、女性ホルモンが低下すると肌の乾燥が進むように口の中のうるおいも不足してきます。加齢により唾液の分泌が減ってくることも関係して、ドライマウスの患者数は、50歳代から急激に増えてきます。またストレスや自律神経の乱れなども、唾液の分泌に大きく影響します。


そのほか、病気の症状のひとつとしてドライマウスがあらわれてくることがあります。とくに、女性の場合は自己免疫疾患のシェーグレン病がその背景に潜んでいることが少なくありません。甲状腺疾患や糖尿病などの疾患があるときや、薬の副作用やがんの放射線の治療でも口腔乾燥が起こります。

ドライマウスの専門外来も増えています

不快な症状をがまんしていると、病気を見逃してしまうことにもなります。また、原因がわからずに悩んでいると、そのストレスからさらに唾液の分泌量が減って、ドライマウスがひどくなります。口の乾燥が気になったら、一度は受診をして原因を確かめてもらいましょう。
ドライマウスは、どの科で相談したらよいか迷う方も多いでしょう。口腔ケアは歯科が専門ですから、まず歯科や口腔外科を受診してください。必要があれば他科と協力しながら治療にあたっていきます。また、最近は、ドライマウス外来や口腔乾燥外来などを設ける病院や歯科医院も増えていますので、気軽に相談をしてください。受診をして「ドライマウス」と診断されたことで、ほっとして症状が軽くなることも少なくありません。

ケアグッズを上手に使うと、つらい症状がやわらぎます

ドライマウスの背景に病気がある場合は、まずその病気を治療することが先決です。つらい症状に対しては、対症療法を行っていきます。最近はドライマウスのケア用品も格段に進歩しています。保湿ジェル、保湿スプレー、保湿効果の高い洗口液などのケアグッズを使うことで、不快な症状もかなりやわらぎます。また、発泡剤の入っていない低刺激性の歯磨き剤もあります。こうしたケアグッズは、一般の薬局などで販売されていることもありますが、歯科医院や専門外来で相談するとよいでしょう。

セルフケアで、唾液の分泌量をアップ

どんなケアグッズも唾液の保湿効果に勝るものはありません。ケアグッズだけに頼らずに、日ごろから、唾液の分泌を高める心がけが大切です。家庭でできるセルフケアのポイントを下にまとめましたので、お口の乾燥が気になる方は、ぜひ試してみてください。

<ドライマウスのセルフケア>

(1) 食事はバランスよく、いろいろな食材を

唾液は噛むことで多量に分泌されますから、口の中が痛むからとやわらかいものばかり食べていると、ますます唾液の分泌が減ってしまいます。少量でもいいので、さまざまな食材を使った料理をバランス良く食べましょう。

 

(2) よく噛んで食べる

唾液をつくって分泌する唾液腺には、耳下腺、舌下腺、顎下線、があります。耳下腺からはサラサラ唾液が、舌下腺からはネバネバ唾液が、そして、顎下線からはネバネバとサラサラのミックスした唾液が出るなど、それぞれの唾液腺でつくられる唾液の性質が違います。
食べ物を噛むときに多く出るのは、耳下腺からでるサラサラ唾液。サラサラ唾液は、口の中のPHを調整し、口内の汚れを洗い流してくれます。唾液は噛めば噛むほど出てくるので、食事はよく噛んで、ゆっくり食べることを心がけてください。
また、唾液を増やすためにはガムを噛むのもよい方法。ただし、1日中噛みすぎると、顎関節症を引き起こす原因になることも。何事もほどほどが肝心です。

(3) ストレスケアを大切に

緊張をすると口の中が乾くことからもわかるように、唾液をつくって分泌する唾液腺は自律神経の影響を受けています。リラックスしているときは、サラサラ唾液が多く出ます。1日30分でもよいのでリラックスタイムをもって、ストレスケアをしましょう。

(4) 規則正しい生活を心がける

不規則な生活は、自律神経を乱すもと。規則正しい生活を心がけましょう。更年期の女性は不調が重なって、日中も寝たり起きたりして過ごす人もいます。けれども、横になっているときは唾液の分泌量が減るのです。気分の良いときは、なるべく体を動かすようにしましょう。

(5) 部屋の湿度に気を配る

部屋が乾燥していると、口の中の粘膜は乾きます。加湿器などを上手に使ってお部屋の湿度をキープしましょう。

(6) 口のストレッチをしよう

口のストレッチをしましょう。口を大きく動かして、「あ」「い」「う」「え」「お」とはっきり発音し、これを1分ほど繰り返します。噛むための筋肉が鍛えられます。

(7) 3か月に1回は歯科の定期検診を

ふだんから歯をよく磨いている人でも、ドライマウスになると虫歯や歯周病にかかりやすくなります。3か月に1回は歯科検診を受けて、お口の状態をチェックしてもらいましょう。

プロフィール

志村 真理子 先生
歯科口腔外科
志村 真理子 先生

昭和大学歯学部卒業。同大保存学教室を経て、1999年NTT東日本関東病院歯科口腔外科に勤務、ドライマウス外来を開設、ドライマウス患者、シェーグレン症候群患者の診療に当たる。
ドライマウスプロジェクトリーダーとして、NSTに参加。
看護・介護における口腔ケアの推進、がん治療(抗がん剤、放射線治療)をうけている患者さんの口腔ケアを担当。
また女性医療推進のため「女性医療ネットワーク」理事、発起人世話人、「性と健康を考える女性専門家の会」運営委員、「基礎体温推進研究会」理事を務め、講演会や雑誌の対談等で啓発活動を行っている。

関連キーワード