プラスコラム
PLUS COLUMN

ワキのにおい、足のにおい

汗をたくさんかくこの時期は、からだのにおいが気になりますよね。とくに気になるのが、ワキのにおいと、足のにおい。今回は、気になる体の「におい」対策についてお話しします。

汗は、本来は無臭。細菌が汗を分解してにおいが発生します

私たちは、汗をかいて体温調節をしています。とくに暑い夏は、たくさん汗をかいて体表を冷やし、体温を一定に保ってくれないと困るわけですが、ちょっとやっかいなのが汗のにおいです。
そもそも私たちの体には無数の汗腺があって、汗はそこから分泌されています。汗腺の種類は2種類あり、ひとつは全身の皮膚にあるエクリン腺です。エクリン腺から分泌されている汗は、そのほとんどが水分で、サラサラしています。

 


一方、ワキの下や性器の周囲、外耳道など限られた部分にある汗腺がアポクリン腺です。ここから出る汗は、たんぱく質や脂質、糖質、鉄分などを含んでいて、少しねばっとしています。ワキガが気になる人は、このアポクリン腺が原因になります。
「汗=においがあるもの」と思われがちですが、エクリン腺から出る汗もアポクリン腺から出る汗も、本来分泌されたばかりの汗は無臭なのです。でも、分泌された汗が、皮膚表面に常在している菌によって分解されると、刺激臭のある独特のにおいが発生します。これが「汗くささ」の正体です。
とくにワキの下はムレやすく、細菌が繁殖しやすい場所。汗をきちんと拭き取っておかないと、においも強くなります。

汗をかいたらすぐに、拭きとって

におい対策の基本は、いつまでも汗を皮膚に残したままにしないこと。汗をかいたらすぐに洗い流して、細菌を繁殖させないことが何よりも大きなポイントです。
でも外出時は、そうもいきませんよね。そこで、いつもタオルを持ち歩いて、タオルを濡らしてこまめに汗を拭き取ること。「タオルは、かさばりすぎ」という人は、カット綿を濡らして使ってもOKです。
においが気になる人は皮膚が丈夫なら、薬局で売っている消毒用アルコールを0.02~0.05%程度に薄めて小さなスプレーボトルに詰めて携帯し、汗が気になるときに、カット綿やティッシュにスプレーしてワキの下を拭くとよいでしょう。


ところで、汗をかいても冷房の効くところに入ると、肌がさらりとするのでつい汗のことは忘れてしまいがち。でも、汗自体は皮膚の上に残っていますから、ほうっておけばやはりにおいの原因になります。涼しい場所に行って汗がひいても、忘れずに汗を拭きとりましょう。
汗対策には、デオドラント剤も有効ですが、過度に使っていると肌荒れを起こすことがあります。また、何種類も重ね付けをしていると、かえってにおいがミックスされて嫌なにおいになることもあるので、使い過ぎに注意しましょう。

ボトックス注射で、汗をかかせなくする方法も

アポクリン腺は毛に関係しているので、ワキ毛の処理をきちんとしておくこともにおい対策として大事なポイント。ワキ毛が多い人は、毛根も多く、アポクリン腺の数も多い傾向があります。ワキのにおい、足のにおいが気になる人は、こまめな手入れを心がけましょう。
また、体調のよしあしは、体臭にも反映します。胃腸の調子を整えておくことも大事です。
汗が多くて気になる人は、今は、ボトックスを脇の下に注射するという方法もあります。ボトックス注射をすることにより、2~3か月のあいだは汗の量をほとんどゼロにすることが可能です。ただ、ボトックス注射は施設によってもかかる費用が異なります。受ける前によく説明を受けて、費用のことなどもあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

足の趾(ゆび)の間もていねいに洗って清潔に

夏は足の裏もたくさん汗をかきます。ワキの下と同様に、こまめに汗を拭きとりましょう。
また、汗とともに汚れも細菌のえさになります。お風呂に入ったときは、足のゆびとゆびのあいだもていねいに洗って、清潔にしましょう。入浴時に意外と忘れがちなのが、足の爪のお掃除。手指と違って、足の爪はアカや汚れがたまりがちです。爪ブラシを使って、爪の汚れをとりましょう。

靴のお手入れも忘れずに

足のにおいを防ぐには、靴のお手入れも大切です。毎日同じ靴を続けて履いていると、湿気がこもって細菌が繁殖しやすくなります。靴は1日履いたら数日は休ませて、靴用乾燥材などを入れて乾かしましょう。これは水虫予防にもつながります。

ところで、靴下やストッキングのにおいは、洗濯機で洗っても取れないことが多いですよね。そんなときは、シャンプーで洗うとにおいがとれます。試してみてくださいね。

プロフィール

平田 雅子 先生
皮膚科医
平田 雅子 先生

私のクリニック目白 院長 日本大学医学部卒。皮膚科専門医。

東京医科大学、同大学八王子医療センターを経て、2003、10月から現職。
女性専門医療の第一線で活躍中。
女性医療ネットワーク理事。
日本医師会産業医。
女性の悩みをきちんと聞くことを心がけた診療に定評がある。