無菌は健康のもと?……そんなに細菌が嫌いですか?
あなたは清潔好きですか? 除菌とか抗菌、滅菌など、清潔志向が高まっている昨今ですが、その結果として、風邪やアレルギー、食中毒などにかかりやすくなった?・・などといわれたりもしているようです。健康にいいと思ってしていることなのに、これではなんだか釈然としませんね。清潔もほどほどにしたほうがいいってことでしょうか?
汚いものの中で健康は育つ?
たとえば家の中を見れば、抗菌スリッパに抗菌便座、抗菌シャツ、抗菌まな板等々。電車やバスに乗れば「抗菌仕様」のつり革、駅のエスカレーターのベルトにも「抗菌」の文字が。そんなふうにいまでは抗菌とか除菌をうたった商品が大流行り、街のあちこちに「抗菌」が氾濫しています。
「細菌」って聞くと、なんだか体によくないイメージを抱いたり、「無菌状態のほうが清潔だし、健康にもいいんじゃない?」などと思っている人は意外に多いかもしれません。
なかには「細菌なんて世界から消えてなくなればいいのに!」なんて真面目にいう人もいたりして・・。
そこまで毛嫌いされるほど、細菌って悪者なんだろうかと思ってしまうのですが、そもそも無菌状態なんて日常生活の中では考えられません。外に一歩出れば、というか出なくても室内にいても、細菌やウイルスがうじゃうじゃしているのが現実で、そのなかで生活しているわけです。それでも多くの人は病気になったり、具合を悪くしたりといったことはなく、ごく普通に暮らしています。いまさら「細菌はヤダー!」といわれても・・な感じではありますよね、細菌の身になってみれば。
細菌は人類が地球に誕生するずっと前から存在している、いわば地球の「支配人」みたいなもので、この支配人がいなくては人間は生きていけないといわれています。
私たちは子どものときから細菌を体内に取り込むことで、免疫を獲得するといったことを何千回も何万回もくり返して、病気にかかりにくい体をつくってきたといわれています。
ある程度、汚い環境の中で育ったほうが免疫力がついて病気にかかりにくかったり、アレルギーにもなりにくかったりといったことが最近の研究で分かってきたようです。
公衆トイレを使えない生活が望ましい?
自分の子どものころを思い出してみてください。床に落ちた食べ物を平気で食べたりしていませんでしたか? 外で遊んで汚れた手のままお菓子をつまんだり、おにぎりを食べたりとか・・。それで熱を出したり下痢や嘔吐をするなど、病気になるようなことはなかったと思います。
さらにもっと赤ちゃんのころは、目にするものはなんでも口に入れたものです。床に落ちたゴミはもちろん、みんなの手あかにまみれたテレビのチャンネルや電話など、いろんな「汚いもの」を口に含んで遊んでいました。「まさか?」と思うかもしれませんが、そんなはるか昔のことを覚えていないだけです。
でも、そうして細菌がいっぱい付着した汚いものを食べたりさわったりして免疫機能を高めてきたわけです。逆にいえば、細菌とふれることなくして免疫機能は強化されないということになります。細菌と人間は共生関係にあるということでしょうか。
ですから抗菌とか除菌、殺菌にこだわって細菌を遠ざけ過ぎると、免疫機能が働きにくくなり、病気にかかりやすくなってしまう危険もあるらしいです。滅菌することで清潔と健康を手に入れたつもりが逆の結果を招いてしまっては身もフタもありません。
手を洗ったりうがいをしたりなどの衛生管理が不要なはずはありません。過剰な清潔が体に悪影響を及ぼす可能性のことを心配するわけです。
ほどほど不潔、ほどほど清潔というのが健康に生きる秘訣であるのかもしれません。
それにあまり清潔を気にし過ぎると毎日が窮屈でいけません。たとえば、外で催しても公衆トイレは使えない、温泉に入れない、電車のつり革につかまれない、大勢で鍋料理が食べられない・・どうです?そんな生活したいと思います?
<参考URL>
*「ウィメンズパーク/意外な事実!『清潔すぎること』がアレルギーを引き起こす原因に」(ベネッセ)
http://women.benesse.ne.jp/matome/ca-childcare/childcare020.html
*「抗菌加工ってなあに」(公益財団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)
http://nacs.or.jp/mini_chishiki/kokin/