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PLUS COLUMN

あ、その応急処置は今や非常識です(その1)

昔の常識だったことが今は非常識、というのはよくあること。ケガのときに行う応急処置も時代とともに変わっています。昔覚えていた知識で応急処置を行っていたら、大間違いどころか、かえって状況をひどくしてしまうことも・・。
あなたの「常識」アップデートしませんか?

 

鼻血が出たとき上を向いて首トントンはNG

まずは、鼻血の応急手当。鼻血がたら~っと出たとき、みなさんは、どんな処置をしていますか? 
昔から「鼻血は首を後ろにそらせてとんとん たたくと止まる」といわれてきましたが、実はこれは何の根拠もないNGな対処法。鼻血が止まらないどころか、上を向いて首をそらすことで、鼻血がのどに流 れ込んでむせかえってしまったり、首をとんとんたたく振動で出血量がかえって増えてしまうそうです。

また、「鼻にティッシュを詰める」のもやめたほうがよさそうです。ティッシュを抜く際の傷のかさぶたがはがれてまた出血してしまうからです。
鼻血を効果的に止めるには、椅子に座って少しうつむき加減になって左右の小鼻を圧迫するようにしっかりつまむのが正解。血がのどに回ってきたときは、飲み込むと吐き気が起こるので、できるだけ吐きだすようにします。
鼻血はたいていは、5~10分くらいで止まります。30分以上とまらない場合は、病院を受診しましょう。

た いていの鼻血は、鼻の入り口にあるキーゼルバッハという部位が傷ついて起こるそうです。子どもの場合は鼻をいじったり鼻を強くかんだりしてよく鼻血を出し ますが、大人がひんぱんに鼻血を出す場合は、白血病や血友病などの血液の病気や高血圧、動脈硬化などの病気が隠れていることもあるので注意が必要だといい ます。心配なときは、一度医療機関を受診することをおすすめします。
なお、頭を強打したときの鼻血は、頭蓋底骨折の疑いがあるそうです。こんなときは安静にして急いで救急車を呼びましょう。
 

「突き指は引っ張って治す」はダメダメ

学生時代にバレーボールやバスケットボールなどの球技をして突き指をした経験はありませんか? こんなときよくいわれていたのが「突き指は引っ張って治せ」という処置法。でも、これ絶対にやってはいけないといわれています。
靱帯を傷つけていたり骨折を起こしている場合は、引っ張ることでよけいに悪化させてしまうからです。

現在、突き指をはじめ、捻挫、骨折、脱臼、打撲、肉離れなどのときに推奨されているのがRICE(ライス)処置。
R:Rest(安静)
I:Ice(冷却)、
C:Compression(圧迫)、
E:Elevation(挙上)
の頭文字をとったもので、患部を動かさないようにして(安静)、患部を氷で冷やし(冷却)、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患部を心臓より患肢を高く上げる(Elevation)こと。

RICE処置は、スポーツを始め、外傷の緊急処置の基本といわれています。処置が早いほどけがの回復が早いといわれていますから、RICE処置を行いながら整形外科などを受診することをおすすめします。
 

 

<参考図書>
・『家庭医学大事典』(小学館)
・『農家の健康便利帳』(万来舎)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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