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便秘の常識、ウソ? ホント?

女性の2人に1人は便秘といわれるほど、便秘は女性に多いトラブル。慢性的な便秘に悩んでいる人も多いのではないでしょうか? 便秘の解消法はたくさんありますが、間違った知識で行っていると、便秘が解消されるどころかますますひどい便秘に陥ってしまうことも! あなたの便秘ケアは間違っていませんか?

毎日排便しないと「便秘」だと思っていませんか?

「毎日排便がないこと」が便秘ではありません。3日以上出ないことが便秘の目安になりますが、たとえ毎日お通じがあっても、おなかが張ったり痛んだり、便がすっきり出なかったり、またコロコロした便が出るような場合は、便秘と考えます。

便秘解消=下剤だと思っていませんか?

便秘解消のために毎日のように大腸を刺激して便を出す作用のある下剤を飲む人が少なくありません。けれども、このような下剤を気軽に常用していると、いつしか下剤が効かなくなってしまうので要注意。下剤がくせになると、排便しようとする腸の働きが弱まってしまうため、通常の下剤の量では効かなくなっていきます。その結果、毎日どんどん下剤をのむ量が増えて下剤依存症のようになってしまいます。


また、下剤で一時的に下痢を起こさせることは、肛門への大きな負担となって痔の原因にもなります。便秘は食事や日常生活の改善で解消するのが基本です。薬はあくまでも一時的な解消法にすぎません。たびたび便秘になる人は、市販薬に頼らずに、ぜひ肛門科や消化器科、内科を受診して相談してください。

センナなど漢方の便秘薬なら安心と思っていませんか?

植物が主成分の便秘薬は、おなかにやさしい薬だと思われがちですが、これは誤り。実はかなり腸を刺激する作用があります。とくに、注意したいのが大腸を刺激して便を出す、センナ、大黄、アロエなどを主成分とした便秘薬。常用すると「大腸黒皮症(だいちょうこくひしょう)」といって、大腸の粘膜に色素沈着が起こり、腸の動きが悪くなります。腸の動きがさらに低下すると便意をほとんど感じなくなることもあるので注意が必要です。

 

色素沈着は、薬を中止してしばらくすると消えていきますが、便秘を悪化させないためにはこうした便秘薬をやたらと長期間服用しないことが大事です。
便秘薬を選ぶなら、作用がおだやかな酸化マグネシウム系の便秘薬がおすすめです。薬剤師さんに相談して、酸化マグネシウム系の薬を選んでもらうとよいでしょう。

下痢っぽい便がいい便だと思っていませんか?

下剤をのむと下痢になったりしますが、慢性的な便秘で下剤を常用している人にとっては、このような軟便が「いい便」だと思っている人が少なくありません。けれども、下痢便は痔の原因になるなどおしりにとってもいい影響を与えません。「いい便」とは、バナナ状で、やわらかさは練り歯磨き程度。色は黄褐色か茶褐色をしています。

便意がなくても毎朝トイレに行くべきだと思っていませんか?

排便習慣をつけるために「便意がなくても毎日決まった時間にトイレへ行くこと」といわれますが、便意がないのに強くいきんだり、トイレで同じ姿勢を続けていると、痔になりやすいので要注意。2~3分たっても便が出ないときは、いったんトイレから出るようにしましょう。

便秘のときは、食事を減らしたほうがよいと思っていませんか?

便秘になると、これ以上便をためないように食事を減らす人がいます。けれども、これは誤解です。食事量が少ないと、逆に便の材料も減ることになるので、ますます便秘がひどくなります。したがって、無理なダイエットをしていると便秘になります。いい便を出すには偏りのないきちんとした食生活を送ることも大事なポイントになります。

プロフィール

野澤 真木子 先生
肛門科・胃腸科
野澤 真木子 先生

日本橋レディースクリニック院長・医学博士

杏林大学医学部卒業。
同大学病院第一外科入局。
山梨県立中央病院外科
聖ヨハネ会桜町病院外科
国際親善病院外科
杏林大学医学部付属病院第一外科
大腸肛門病センター松島病院
松島ランドマーククリニック院長を経て現職

医学博士
日本外科学会専門医
日本消化器外科認定医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
日本大腸肛門病学会専門医

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