人の顔を覚える顔細胞の不思議
町の人ごみの中で、チラッとみただけで「あ、あの人だ」と知り合いの顔がわかることがありますよね。名前は思い出せなくても、顔はしっかり覚えている・・。人間の脳には、顔の記憶を専門的に引き受けている「顔細胞」というものがあるそうです。
顔細胞は人の顔の目、鼻、口に反応する
人ごみの中でも特定の人を見分けることができるのは、脳の「側頭連合野」という領域。その中に人間の顔や顔に非常に近いものに反応する神経細胞があります。それが「顔細胞(顔ニューロン)」といわれるもので、人の顔を記憶します。
顔細胞は、生後2週間ころから働き始めるといわれています。生まれたばかりの赤ちゃんの視力は0.03程度で、20センチ以上離れた場所のものはぼんやりと見える程度。けれども、生まれたばかりでも、お母さんの顔を好んで見ることが報告されています。また、自分の母親と見知らぬ女性の顔を区別するともいわれています。
さらにこんな研究報告もあります。生まれたばかりの赤ちゃんに人の顔を単純化して描いた絵を見せて、視線の動きを観察したところ、赤ちゃんがいちばん注視するのは、顔の中でも目と口の部分だそうです。しかし、次に顔と口を描いていない顔を見せると最初の絵のようには関心を示さなかったそうです。
実際この顔細胞は、目や鼻、口に敏感に反応する特徴があるといいます。
目や鼻、口元は顔の特徴がよくあらわれる部分。顔を認識するには、この部分のパーツをしっかり記憶することがポイントなのかもしれません。
物を人の顔に見たててしまうのも、顔細胞の働き?
それにしても顔に特化した神経細胞があるなんて、興味深いですね。さまざまな顔を見分ける能力は、長い進化の過程で、敵か味方かといった顔の情報を認知するために特別に発達したのかもしれませんね。
ところで、壁のシミや木の幹などが人の顔に見えることはありませんか? 人間の目や口にあたる部分の模様があると、無意識のうちに人の顔に見立ててしまうのも脳の「顔細胞」というしくみが働いている可能性があるといわれています。
顔を記憶する顔細胞ですが、手に対して特異的に反応する手細胞の存在もあきらかになっているそうです。さらに、脳の中には形だけでなく他人の身振りや動作などを目にすると活発に働く神経細胞があること知られています。他人がしている事を我が事のように共感する 「ミラーニューロン」といわれる神経細胞です。ミラーニューロンについてはまた次の機会にお話しします。
参考文献:「知れば楽しいおもしろい 赤ちゃん学的保育入門」小西行郎著(フレーベル館刊)