病気にかかりやすい「魔の時間帯がある」
病気にはそれぞれ発症しやすい時間帯があるのはご存じでしょうか。
今回は、時間医学のお話です。
体調をコントロールする体内時計
私たちはふだん朝起きて活動し、夜は眠ってからだを休めるという生活を送っています。あたりまえのように過ごしているこの生活リズムは、どこから来ているかご存知ですか?
このような1日の生活リズムを刻んでいるのが体内時計と呼ばれるもので、脳の視床下部がコントロールしています。
夜になると自然に眠くなり、朝が来ると自然に目覚めるのもこの体内時計によるものです。そして、血圧、体温、心拍、呼吸、ホルモンの分泌など、生命に必要なからだの機能も約24時間周期でリズムを刻んで変化しています。
たとえば体温は、昼間活動するときには高くなり、夜になるにつれて下がって眠くなるというリズムをくりかえしています。
また、眠りに入ると成長ホルモンが分泌されて、脂肪の燃焼や皮膚の再生、からだの傷んだ部分の修復を行うほか、疲労を回復させ病気の免疫力を上げてくれます。睡眠中にからだのメンテナンスをして、また新しい朝を迎えるというわけです。
このように、約24時間で刻むからだのリズムを日周リズム(概日リズム)といいます。生体リズムは、このほかにも月単位で生じる女性の月経周期や90分周期のリズム(レム睡眠やノンレム睡眠など)、また1年を周期とした年周リズム(春になると眠気が強くなり、秋は食欲が増すなど)といったさまざまな種類があります。
病気には、かかりやすい時間帯がある
これらの生体リズムが正しく動いていると、私たちは健康でいられますが、リズムが狂うと眠れなくなったり、代謝が悪くなって太ったり、肌トラブルが起きるなどさまざまな不調が起こってきます。
また、たとえば急性心筋梗塞(きゅうせいしんきんこうそく)は、血圧の変動が大きい午前中に起こりやすいなど、病気にはかかりやすい時間帯があることがわかっています。
ほかにも病気と時間の関係では、ぜんそくは肺の機能が低下する午前4時に多く、胃酸は夜に活発に分泌されるため、夜間は胃潰瘍(いかいよう)や十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)が進行しやすい、がん細胞はからだの代謝がもっとも活発になる睡眠中に増殖することなどが知られています。
生体リズムの乱れると生活習慣病やがんになりやすいこと、さらに寿命が短くなることなども報告されています。人が健康であるためのカギは生体リズムが握っているといえるでしょう。
「健康のためには、規則正しい生活を」――昔から耳にタコができるくらい聞かされるこの言葉、「わかった、わかった」とつい聞き流したくなりますが、生体リズムのことを知ると、なるほど納得という気がしてきませんか?