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女性のライフサイクルとストレス

女性の心とからだは、女性ホルモンの影響をとても大きく受けています。
女性ホルモンによって訪れるからだの変化についての知識を持ち、いま自分が、ライフサイクルのどの位置にいるかを認識することは、とても大切です。

女性を取り巻く社会環境は、かつてとは比べものにならないほど変化しました。男性と肩を並べて働く女性が増えて、女性は一見社会の表舞台で活躍しているように見えます。けれども、基本的には日本はまだまだ男性社会。メンタリティの面でも「女は、家庭で家事や育児をするのがあたり前」といった考え方が根強く残っています。


そして女性もまた、「自分はこれをやりたい」と主体的な思いを持って仕事を持ち、人生を生きている人は少ないように思えます。
学校も就職も、結婚も、「みんながそうしているから」という理由で流されて生きていると、あるときふっと「これまでの自分は何だったのか」という、むなしい思いにとらわれることがあります。
こうしたストレスが、女性ホルモンのバランスが崩れたときにからだの不調として強く出てしまうことがあります。

PMSは、仕事・結婚・子育てに揺れる30歳前後がピーク

PMS(月経前症候群)をご存じですか? 排卵から月経までの2週間、女性ホルモンの黄体ホルモンがたくさん出る時期に、その影響を受けて、心にからだにさまざまに出る不快症状を総称してPMSといいます。
イライラ、憂うつ、むくみ、下腹部痛、集中力の低下など、PMSの症状はさまざまです。月経前は誰でも少なからずこうした不快症状が出てくるのですが、仕事や生活上の疲労やストレスが大きいと、日常生活に差し支えるほど強い症状が出る傾向があります。


PMSがもっとも多いのは30歳前後。独身で働いている女性は、ちょうど仕事も覚え、結婚や妊娠のことなどを意識してくる年代でしょう。仕事が充実していればいいのですが、やりがいのない仕事をしていると「こんなことやっていて、いいのだろうか」という思いにとらわれたりします。
また、仕事を辞めて子育て中の女性は、これまで男と肩並べて社会に出ていた生活から一変して、子どもとふたりきりで家で過ごす毎日が続きます。育児は責任の重い仕事ですが、その反面「自分だけが社会から取り残されている」といった思いもあります。加えて、育児は、待ったなしの24時間営業ですから、疲れもたまります。そうなるとPMSもひどくなります。

介護や家庭問題、職場のストレスが増大する更年期

これは、更年期障害も同じです。更年期は、閉経を挟んだ10年間で、45歳ころから55歳ころまでをさします。この時期女性は、もっとも大きなホルモン変化の波に揺さぶられ、さまざまな不調が心身に出てきます。
基本的にホルモンの低下は誰でも起こるものですが、ひどい症状が出るかどうかは、それまで、その人がどういう生き方してきたか、また現在どういう状況に置かれているかがとても大きく影響します。


たとえば、専業主婦では、子育ての終焉とともに生きがいなくなって、「空の巣症候群」のような形で、更年期障害がひどくなる人が少なくありません。
また、仕事を持つ女性では、年齢的にもちょうど中間管理職のころにあたり、職場のストレスが増大する時期。
更年期世代の女性では、さらに親の介護の問題も出てきます。
こうしたストレスが、からだの変化と一緒になって、ひどい更年期障害が出てくることが少なくありません。

10年後、20年後を見据えたライフプランを

PMSも更年期障害も、低用量ピルやホルモン補充療法で、かなり症状を軽減することができます。
また、女性の心とからだは女性ホルモンの影響をとても大きく受けています。ですから、女性ホルモンによって訪れるからだの変化についての知識を持ち、今自分は、ライフサイクルのどの位置にいるかを認識することはとても大切なこと。
「今」に流されることなく、10年後、20年後を見据えたライフプランを立て、自分にとって満足できる、豊かな人生を歩んでいただきたいと思います。

プロフィール

吉野 一枝 先生
産婦人科・臨床心理士
吉野 一枝 先生

臨床心理士・産婦人科医 よしの女性診療所院長

日本産科婦人科学会認定医、日本臨床心理士資格認定協会会員、日本ソフロロジー法研究会会員、プロセス・コミュニケーション・モデル (PCM) 認定トレーナー
1954年東京生まれ。 高校卒業後、今で言う「フリーター」や、コマーシャル制作の会社勤務を経て、一念発起して医学部を志す。
趣味は音楽、料理、書道、乗馬など。

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