「悪い酒」も飲み方しだいで「いい酒」に?
とかく「体に毒」と悪い面だけが強調される酒ですが、飲み方しだいで「体の薬」にもなるのが、古来より酒が多くの人を魅了するところでしょうか。
そんな酒の「よい面」についても考えてみました。
酒は薬か、それとも病気の元凶か?
ご存知のように「酒は百薬の長」と昔からいわれます。またその一方で「万(よろず)の病は酒よりこそ起れ」などともいわれます。
これは南北朝時代(1336~1392年)といいますから、今から700年ほど昔の随筆家・吉田兼好が『徒然草』で語った言葉といわれています。
数々の病気の原因は「酒を飲むことによるもの」というわけです。
今でもあちこちの酒場で、「百薬の長」を言い訳にグラスや盃を次々とあおる左党を前に、「万の病は……」と言い返すノンアルの愛飲家もいらっしゃることでしょう。
現代語風にひらたくいえば、「どんどん酒もってこい」「そんなに飲むと体に毒だよ」みたいな、そんなようなやりとりが、酒の起源とされる数千年以上も昔から紀元前のメソポタミアの人々をはじめ、それ以降のさまざまな時代に生きた人々の間で交わされてきたに違いありません。
1日の「節度ある飲酒量」はどれくらい?
また「酒を飲んでも飲まれるな」ともよくいわれます。
1日にどのくらいの飲酒量が「良し」とされるのでしょう。
厚生労働省の『健康日本21』では、1日当たりの「節度ある適度な飲酒」は、純アルコール量に換算して男性20g程度、女性10g程度としています。
その逆に健康リスクを高めるとされる多量飲酒の純アルコール量の目安は、男性40g以上、女性20g以上です。こうした多量飲酒は高血圧や糖尿病といった生活習慣病などのリスク要因とされています。
純アルコールとは、アルコールの濃度を示す「度数」とは違います。例えば20gの純アルコールは500mlの缶ビール(度数5%)1缶に相当します(純アルコール=500(ml)×0.05(%)×0.8(アルコールの比重)=20g)。
ちなみに純アルコール10gは「1ドリンク」と呼ばれ、飲酒量の基準なのだそうです。これはビールなら約250ml(中ビン半分)、ワインなら約100ml(ワイングラス約1杯分)に相当します。つまり500mlのビールのなら2ドリンクになります。
節度ある飲酒をたとえば「ドリンク」であらわすと、男性2ドリンク、女性1ドリンクということになります。
酒を飲んで得られる「良い」ことは?
何かと「悪者」にされがちな酒ですが、人間にも「悪い人もいれば、いい人もいる」ように、酒にも「悪い酒もあれば、いい酒もあり」ます。
よくいわれている飲酒のメリットとして、「食欲増進」「血行の促進」があります。アルコールが胃液の分泌を活発にして消化を助け、食欲を促したり、血行をよくしてくれます。
また、少量の飲酒は精神的な緊張をほぐして「ストレスの緩和」に役立ちます。
さらにお祭や結婚式などの祝い事、歓迎会や送別会、忘年会に新年会、同窓会にクラス会などの席にお酒は欠かせません。
ほかの人とのコミュニケーションを活発にすることから、「酒は人間関係の潤滑油」などともよくいわれます。
他にも、たとえば「飲酒量と死亡率」に関しての国内外の研究は広く知られています。アルコールの「Uカーブ効果」とか「Jカーブ効果」などと呼ばれるもので、「まったく飲酒しない人より、適量の飲酒は死亡率を低下させる」というアレです。
これは飲酒によって動脈硬化を予防するHDL(善玉)コレステロールが増加するなどして、心血管疾患のリスクを低減させるというものですが、一方ではそれを否定する別の研究もあるようで、悩ましいことです。
酒を飲むことで失われるのは?
お酒の飲み過ぎが健康によくないことは誰もが知るいわば常識です。
飲み過ぎによる主な健康障害には、高血圧、肝障害、膵炎、脂質異常症、高尿酸血症、食道がん、口腔がん、咽頭・喉頭がんなど、さまざまな生活習慣病をはじめ、アルコール使用障害、脳の萎縮などがあるといわれます。
では体に負担をかけず、おいしく、楽しくお酒を飲むにはどんなことに注意すればいいでしょう。
公益社団法人アルコール健康医学協会が作成した「適正飲酒の10か条」では、
(1)談笑し 楽しく飲むのが基本です
(2)食べながら 適量範囲でゆっくりと
(3)強い酒 薄めて飲むのがオススメです
(4)つくろうよ 週に二日は休肝日
(5)やめようよ きりなく長い飲み続け
(6)許さない 他人への無理強い イッキ飲み
(7)アルコール 薬と一緒は危険です
(8)飲まないで 妊娠中と授乳期は
(9)飲酒後の運動・入浴 要注意
(10)肝臓など 定期検査を忘れずに……と提案しています。
他にもたとえば、「ノンアルコール飲料やソフトドリンクを活用する」や「飲みに誘わない・断る勇気をもつ」などもよさそうです。
これら提案の全部をいっぺんに実践するのは無理にしても、できることから始めて、節度ある適度な飲酒、お酒との自分なりの付き合い方を見つけましょう。
<参考>
*「健康日本21/節度ある適度な飲酒」「e-ヘルスネット/飲酒量の単位」(厚生労働省)
*「飲酒の基礎知識」「適正飲酒の10か条」(公益社団法人アルコール健康医学協会)
*「気になる病気・健康のこと 飲酒」(公益財団法人 大阪府保健医療財団 大阪がん循環器病予防センター)
*「飲酒量と死亡率の関係がJカーブを描く理由は?」(日本医事新報社)
*「お酒との正しい付き合い方を考えよう」(サントリー株式会社)





