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冬ならではの「隠れ脱水」にご用心!

「脱水症」といえば「夏のもの」と思われがちですが、冬でも注意が必要のようです。

汗をかきにくい時季だからこそ気をつけたい冬の「隠れ脱水」……寒いから大丈夫と安心はできません。

 

冬はのどの渇きに気付きにくい

「冬に脱水症?」なんて思った方も多いのでは?

 冬は夏と違い汗をほとんどかかないことなどから、水分を失っている自覚があまりありません。のどの渇きにも気づきにくいせいか、夏場に比べて水分摂取の機会が減りがちといいます。

 また、かぜなどの感染症対策としてマスクを着用している方もいるでしょう。マスクをすると口や鼻、のどに適度な湿度が保たれて、乾燥を感じにくくなるともいわれています。

もともと冬は空気が乾燥気味。エアコンなどの暖房器具を使うことで湿度が低くなり、室内がさらに乾燥することもあります。

湿度が低いと体が乾きやすいともいわれていて、まさしく冬は脱水を起こしやすい環境といえるかもしれません。

 

「不感蒸泄」は冬に多い?

わたしたちはふつうに生活していても、毎日、体の中から約2.5リットルもの水分を失っています。安静にしていても尿や便(1.6リットル)以外に、無意識のうちに、それと感じないまま、皮膚や粘膜のほか呼気などによって約0.9リットルの水分が失われているといわれます。

「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」と呼ばれる水分喪失です。

気温が低く空気が乾燥した冬は、この不感蒸泄によって多くの水分が蒸発して失われるといわれます。

不感蒸泄は冬の「隠れ脱水」の原因の1つにもあげられています。

「隠れ脱水」とは、脱水症になる一歩手前の段階で、「体の水分量が減っているのに症状がはっきりしない状態」であることなどから脱水症予備軍ともいわれます。

 

体の乾燥によりバリア機能が低下?

 気温が低く空気が乾燥する冬は、ウイルスにとって活動の好期。

毎年のように、かぜやインフルエンザなどの感染症が猛威を振るいます。

でも人間には、こうしたウイルスの攻撃に備えるための防御機能が備わっているといいます。「免疫システム」と「バリア機能」です。

なかでも体内への異物の侵入を真っ先に防ぐ最前線で活躍する防御機能が「線毛運動」といわれるものです。

「線毛」は空気の通り道にあたる気道内にあって、粘液とともにのどや鼻から侵入したウイルスが肺に入り込むのを防ぐ働きをもっているといいます。

気道内のウイルスは粘液と線毛の小刻みな動きによって咳や痰と一緒に体外へ排泄されるほか、だ液に混じって胃液によって分解されます。

ただ、この線毛にも弱点があるといいます。乾燥です。

冬は空気も体も乾燥しやすいため気道内の粘液も減少し、線毛の働きが鈍るというのです。

 線毛のバリア機能を守るためには、湿度の維持と水分の補給が大切です。

 

冬の「隠れ脱水」を防ぐためには?

 冬の脱水を防ぐことは体の防御機能を維持することにつながります。適切な水分補給と加湿器などによる湿度のコントロールが重要になります。

 冬はのどの渇きを感じにくいので、のどが乾いていなくても水分をこまめに補給することが大切といいます。

入浴の前後、寝る前と起床後、運動の前後と途中、飲酒中とその後など、一度にたくさんの水を飲んでも尿として排泄されるだけなので、何回にも分けて飲むのが効果的といわれます。

厚労省によれば飲料水だけで1日最低1.2リットルが必要だそうです。

 1日3回の食事で約1リットルの水分が補給できるといいます。

その際、スープやみそ汁は忘れずに。葉物野菜や果物は水分が摂取できます。冬は野菜たっぷりの鍋料理がおすすめです。体も温まり栄養も水分もとれます。

 快適な湿度は40~60%といわれます。加湿器を上手に利用して湿度を保ちましょう。洗濯物や濡れタオルを部屋干しするのも効果的といいます。

 脱水を起こす要因に筋肉量の減少がいわれます。

筋肉は水分の貯蔵庫ともいわれています。運動を心がけて筋肉量のアップをはかりましょう。

 

<参考>

*「健康にため水を飲もう推進運動」(厚生労働省)

*「不感蒸泄」(日本救急医学界)

*「冬のかくれた脱水」(奈良県/県民だより奈良2024年2月号)

*「カラダの乾燥と線毛運動の関係」「カラダの乾燥を防ごう(大塚製薬株式会社)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。