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急性の糖尿病「ペットボトル症候群」って?

酸清涼飲料水の飲み過ぎが招く急性の糖尿病 「ペットボトル症候群」って?

炭酸飲料やコーラなど、糖分を含む清涼飲料水を1日に大量に飲むうちに、糖尿病の悪化した状態である糖尿病性ケトアシドーシスにおちいる危険があり といわれています。俗に「ペットボトル症候群」ともいわれるこの病気、清涼飲料水を好んで飲む10代〜30代の若い世代に多くみられるとのこと。アルコー ル同様、飲み過ぎには注意が必要です。 

 

清涼飲料水の大量摂取が招く、怖い糖尿病

あなたは1日にどのくらいの量の清涼飲料水を飲んでいますか?

全国清涼飲料工業会によると、日本人1人あたりの清涼飲料水の消費量は年間約160リットル(2013年)。500ミリリットルのペットボトルに換 算して、赤ちゃんからお年寄りまで含めて、ほぼ1日に1本の割合で清涼飲料水が飲まれている計算になります。暑さや疲れでカラカラに渇いたノドに、冷えた 炭酸飲料水はたまらなくおいしく感じます。また冬、冷えた体を温める缶コーヒーは、まさに心を癒すホッとする飲み物です。
 

ただし、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」といいます。
 

炭酸飲料水やコーラ、缶コーヒー、果汁飲料などを毎日、大量に摂り続けると、糖尿病性ケトアシドーシスという糖尿病の悪化した状態におちいってしま うおそれがあるというのです。糖尿病性ケトアシドーシスというのは……血液中のブドウ糖の分解をするインスリンの不足→体はブドウ糖のかわりに脂肪を分解 してエネルギーを得ようとする→体内にケトン体という呼ばれる毒性の物質が蓄積→ケトン体が蓄積すると体内は酸性に傾く(ケトアシドーシス)→すると高血 糖に加え、倦怠感や脱水、意識障害、昏睡など示すなど重篤な症状を示す……という状態で、早急な治療が必要といわれます。
 

こうした状態を示す人の多くがペットボトルの清涼飲料水を大量に飲んでいることから「ペットボトル症候群」と名付けられました。ただし、これは俗名で医学的には「ソフトドリンクケトーシス」とか「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれます。
 

清涼飲料水には8〜10%の糖分が入っています

炭酸飲料やコーラ、コーヒー飲料、スポーツドリンクなどの清涼飲料水には8〜10%の糖分が入っています。1.5リットルのペットボトルの場合、約 120〜150グラムの糖分を摂取することになる計算です。これは6グラム入りのグラニュー糖のスティック20〜25本にも相当します。炭酸飲料やコーラ などを水がわりにガブガブ飲んでいたり、コーヒー飲料を毎日5本も6本も飲む人は要注意です。

「ペットボトル症候群」を起こした人は、こうした清涼飲料水を1日に平均2.2リットル飲んでいたという報告があります。なんと毎日200グラム以 上の糖分を摂っていたことになります。こうした糖分を含んだ清涼飲料水を毎日、大量に飲み続けると血糖値が上昇します。高血糖になるとノドが渇き、さらに 清涼飲料水を飲むという悪循環におちいり、常に高血糖の状態が続くことで「ペットボトル症状群」になってしまうのです。もともと糖尿病の素因をもっている 人や軽度の糖尿病の人が糖分を含む清涼飲料水を多量に摂取することで起こることもあるといわれます。

 

「ペットボトル症候群」は重症化すると意識がなくなり昏睡を起こすなど、とても危険な病気で命にかかわるともいわれます。

また、10代や20代の若いうちから糖分を含む清涼飲料水を毎日たくさん飲んでいる人は、将来的に肥満や生活習慣病の心配があるとされています。水 分補給は水やお茶をメインにして、炭酸飲料やコーラ、コーヒー飲料は、たまに嗜好品として飲むといった程度にしてはいかがでしょうか。

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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