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「腸は第二の脳」といわれるのは、なぜ?

「手は第二の脳」と呼ばれているのはよく知られていますが、腸も「第二の脳」といわれているようです。

腸は単なる消化器官の1つにとどまらず、わたしたちの心身の健康に深く関与しているようです。

 

セロトニンのほとんどは腸でつくられる?

喜びや驚き、意欲など感情のコントロールに関係するセロトニンは、「幸せホルモン」ともいわれる脳内の神経伝達物質ですが、そのほとんどは腸でつくられるのだそうです。全身で生成されるセロトニンのうち、腸内でつくられるのは約9割、脳でつくられるのはわずか数%といわれます。

ただ、腸で生成されたセロトニンはそのままでは脳の中に入ることはできないそうです。

脳には「血液脳関門」といって、血液から脳への物質の行き来を制限する関所のような仕組みがあって、腸でつくられたセロトニンは、脳の中に入ることはできないといいます。

通過できるのは脳の栄養源となるブドウ糖やアミノ酸などのごく限られた物質だけのようです。

脳の中でセロトニンを生成するのに必要な物質のトリプトファンはアミノ酸の一種。食事からとったトリプトファンは腸で吸収され、この血液脳関門を通過して腸から脳に送られるといいます。

それを材料にして脳内のセロトニンはつくられるというのです。

 

「脳腸相関」ってどういうもの?

「脳腸相関」という言葉をご存知でしょうか。

セロトニンの生成の例のように、脳と腸はお互いに関連しながら働くことをいいます。

例えば腸の不調がもとでストレスや不安感を覚えたり、その逆にストレスが腸の働きを悪化させて腹痛や便秘、下痢を繰り返したりといったことです。

腸は自律神経によってコントロールされていて、ストレスの影響を受けやすく、ストレスによって自律神経のバランスがくずれると便秘や下痢といった腸の不調が起こるそうです。

自律神経の乱れは腸に影響して、腸の不調によって、頭痛や不眠、不安やうつ症状などもみられるといいます。

 

「腸は第二の脳」といわれるわけは?

さらに「腸は第二の脳」ともいわれます。

腸には情報の伝達と処理のための神経細胞(ニューロン)が数多く存在して、その数は脳に次ぐといわれます。

腸は脳からの指令がなくても自ら判断して自律的に働くことから「第二の脳」などと呼ばれているようです。

腸は脳だけでなく他の臓器とも密接につながっていて、全身に信号を送ることで体のバランスを整えていると考えられます。感情にもかかわっているといわれます。

「腹が立つ」とか「腹の虫がおさまらない」といった「心(脳)」と「おなか(腸)」を関連させるような慣用句がありますが、昔の人は長年の経験で、脳と腸の機能は影響しあっていることを感じていたのかもしれません。

 

腸内環境を整える生活習慣とは?

腸には体の免疫細胞の6~7割が存在しているそうです。

腸管免疫という言葉もあります。食生活の乱れなどで腸内環境が悪化すると免疫機能が低下して感染症などにもかかりやすくなります。

腸内環境を整える生活習慣を心がけましょう。

例えば、セロトニンの材料になるトリプトファンは大豆類、乳製品、穀類、ナッツ類に多く含まれているといいます。腸内細菌のエサには納豆、チーズ、味噌などがおすすめだそうです。

 またセロトニンの分泌を促すには、起床後、朝日を浴びる、ウォーキング、踏み台昇降などのリズム運動も効果的といいます。

まさに腸の健康が体と心と幸せのカギを握っているといえます。

 

<参考>

*「幸せホルモンは脳と腸、どちらでつくられる?〜脳腸相関について〜」「体の中から健康に!腸内環境を整える」(大正製薬株式会社)

*「幸せホルモンを増やす方法とは」(NsPace/帝人株式会社)

*「腸のはなし」(一般財団法人 日本健診財団)

*「腸は全身の司令塔」(株式会社アイセイ薬局)

*「“腸活を成功に導く3つの方法」(第一三共ヘルスケア株式会社)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。