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水のガブ飲みは危険…なぜ?

熱中症の予防に水分補給は欠かせません。

といって飲みすぎは体に大きな負担となり、思わぬトラブルを招くといいます。

水や清涼飲料水のガブ飲みによって起こる健康リスクとはなんでしょう?

「水分はとれている」は半数以上 

1日に体から排出される水分は、大人で約2.5ℓといわれます。

内訳は尿や便として約1.6ℓ、汗や呼吸などで排出される水分が約0.9ℓだそうです。

水分不足による脱水を回避するには、1日合計2.5ℓの水分を最低限、補給する必要があります。

一般的には食事からが約1.0ℓ、そして飲料水で1.2ℓ摂取し、残りは代謝水(栄養が体内で燃焼されるときにできる水)が0.3ℓといわれています。

 食事からの水分補給が意外に多いことに驚きます。

「1日三度の食事を抜いてはいけない」とよくいわれますが、栄養不足はもちろんのこと、水分不足におちいりかねないからという警告でもあったわけですね。

 では、実際にどのくらいの人が1日に必要とされる1.2ℓの水分を「とれている」と思っているでしょうか? 

大正製薬の調査によれば、20~30代の60.5%が「とても・やや(あてはまる)」と回答。40~50代では55.0%、60~80代では66.3%でした。

水の飲みすぎによる「水中毒」に注意

 水分補給が大切とはいえ、いっぺんにたくさんの水を飲んでも、体が一度に吸収する量はだいたいコップ1杯分くらいだそうで、残りは排泄されてしまうそうです。

毎回少しずつ、例えば、朝、昼、夜の食事以外に1日に6回ほど、それぞれコップ1杯(約200ml)程度を少しずつ何回かに分けて飲むのが望ましいとされています。

ただ、水分補給で注意したいのが水のガブ飲み、イッキ飲み。短時間で多量の水分を摂取すると「水中毒」を引き起こすおそれがあるといいます。

水中毒とは、腎臓の利尿調整が追いつかず、血液の塩分濃度が薄くなる「低ナトリウム血症」のことで、めまい、頭痛、嘔吐などがみられ、悪化すると意識障害や呼吸困難など、重篤な状態に至ることもあるそうです。

通常の生活レベルの場合、1日に3ℓ以上の水分をとると、水中毒のリスクが高まるといわれているようです。

「ペットボトル症候群」って何?

 飲み過ぎに注意が必要なのは水ばかりではありません。最近、話題になっている「ペットボトル症候群」をご存知でしょうか?

 糖分の入った炭酸飲料やジュース、スポーツドリンク、コーラなどの清涼飲料水の飲みすぎで起こる病気で、正式には「ソフトドリンクケトーシス」とか「清涼飲料水ケトーシス」などと呼ばれます。

 甘い飲み物を多量に飲むことで血糖値が急上昇し、糖尿病のような症状があらわれるといいます。

ペットボトルに入っていなくても糖分の入った甘い飲み物であれば、紙パックでも缶入りの飲み物でも同じことが起こります。

糖分の入った甘い飲み物を1日に1ℓ以上飲んでいると、ペットボトル症候群の発症リスクが高まるといわれています。

 清涼飲料水には思った以上の糖分が入っています。

平均でも10%ほどの糖分が含まれているといいます。

例えば500mlでは約50gの糖分が含まれていることになり、1本3gのスティックシュガー16~17本に相当します。

清涼飲料水でのどの渇きを癒さない

 ペットボトル症候群の主な症状は、のどの渇き、多尿、倦怠感、疲労感などといわれます。

特にのどの渇きは、さらなる高血糖を招くおそれがあるといいます。というのも血糖値が上昇すると、体は血液中の過剰な糖を薄めようとして水分を求めます。

そのとき通常の水ではなく、同じように糖の入った例えばジュースを飲むとさらに高血糖になり、ますますのどが渇き、またジュースを飲みたくなるという悪循環におちいるというのです。

重症になると意識がもうろうとなり、昏睡状態から死に至るといわれます。

 ペットボトル症候群は、10~30代の男性に多いといわれます。運動で汗をかいた後などに、水がわりにスポーツドリンクや糖分の入った炭酸飲料をガブ飲みするのは控えたほうがよさそうです。

 

<参考>

*「熱中症への対策意識および実態(20~80代の700人対象/2024.7.12~16」(大正製薬株式会社)

*「水中毒・多飲症とは?」(こくみん共済<全労済>)

*「水の飲み過ぎは危険です」(時事メディカル・時事通信社)

*「ペットボトル症候群に注意!」(名古屋市衛生研究所)

*「がぶ飲みで『ペットボトル症候群』に注意」(日テレNEWS NNN/2024.5.22)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。