
女性は男性よりも飲酒の害を受けやすい?
女性は男性よりも少ない飲酒量で、アルコールによる健康被害を受けやすいといわれています。
女性の飲酒率が増加しているといった指摘もあるなか、どんなリスクがあるのか気になります。
女性もお酒を楽しめる時代
「女だてらに酒を」などといった古くさい固定観念はすでに過去のもの。いまは女性の「一人酒」を扱ったテレビ番組も人気ですし、バーや居酒屋でひとり呑みをする女性も増えてきたようです。
「女性の社会進出」が当たり前になり、女性がお酒を飲むことに対する「社会の偏見が減少した」といったことがその理由としてよくいわれます。
厚生労働省の調査(年代別習慣飲酒率)によると、「週に3回以上、1日当たり日本酒1合以上」の酒を飲む習慣飲酒者は、男性では1989年に51.5%だったのが2019年には33.9%に減少しています。
逆に女性では同じ期間で6.3%から8.8%に増えています。
データでも女性がお酒を楽しむ機会の増えたことがうかがえます。
女性の飲酒率が増えている?
この調査によれば、1989~2019年の期間の女性の習慣飲酒率は、30~70代までの各年代で増えているのですが、特に30代は8.0%から11.1%、40代が8.8%から13.2%、50代は6.5%から16.6%と、30~50代の習慣飲酒率が大幅に増えているのが目立ちます。
また、『令和5年国民健康・栄養調査』によれば、「生活習慣病のリスクのある飲酒者」(1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上)の割合でも、男性が16.3%(2011年)から14.1%(2023年)に減っているのに対して、女性は同期間で8.2%から9.5%に増えています。
女性が誰に気兼ねすることなく、自由にお酒を楽しめるようになったのはとても喜ばしいことですが、一方で、女性は男性に比べて「少ない飲酒量」と「短い飲酒期間」で、アルコールによる健康被害を受けやすいといったこともいわれています。
女性はアルコールの影響を受けやすい
厚生労働省が作成した『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』でも「女性は男性に比べて分解できるアルコール量が少なく、女性ホルモン(エストロゲンなど)の働きによりアルコールの影響を受けやすいので、男性に比べて少ない飲酒量かつ短期間でアルコール性肝硬変になりやすい」と指摘しています。
女性の肝臓は「お酒に弱い」ことが多くの研究で示されているそうです。
他にも乳がんや骨粗しょう症なども起こりやすいといわれています。月経不順や不妊などとの関連も指摘されています。
特に妊娠中の飲酒は少量であっても避けるべきです。
生まれてくる赤ちゃんの体重減少や脳の障害など、さまざまな影響が懸念されるといいます。
また、かつては比較的まれだった女性のアルコール依存症も増えてきているそうです。男性が10~20年かかるところを女性の場合は5~10年で依存症になるといわれています。
「飲んだり、飲まなかったり」がちょうどいい?
女性は男性に比べて多くは小柄で、体内の水分量が少なく、体脂肪量が多いといわれます。
アルコールの代謝能力も平均すると男性の4分の3程度と低く、アルコールの影響が強く出るのだそうです。
同じ体重の男性と同じ飲酒量でも血中アルコール濃度が男性よりも高くなり、急性アルコール中毒などの過度の酩酊に陥りやすくなるといいます。
健康のリスクを考えれば、女性の飲酒量は男性の半分から3分の2くらいといわれます。
厚労省の『健康日本21』では、1日当たりの適度な飲酒は、純アルコール量に換算して男性20g程度、女性10g程度としています。
ちなみに500mlの缶ビール(度数5%)の純アルコール量は20gで、女性の適度な飲酒量の2倍に相当します。1本飲んだら「アウト!」です。
女性は男性よりもお酒に弱い体質。
お酒が好きな女性にとっては残念なことですが、健康のことを考えると毎日は飲まず、「飲まない日もあり、飲む日もある」といったくらいがちょうどいいようです。
<参考>
*「わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移」「女性の飲酒と健康」(e-ヘルスネット/厚生労働省)
*「女性の飲酒 リスク深刻」(東京新聞/2025.6.24)
*「適正飲酒のススメ」(ビール酒造組合・日本洋酒酒造組合)