
「良い汗」と「悪い汗」、何が違うの?
汗が気になる季節になりました。服の汗じみや匂いに悩まされる人も多いでしょう。
できるなら汗などかきたくないと思う人も……。
でも汗はたくさんかいた方が、匂いがしなくなるといいます。なぜでしょう?
汗の分泌は2つの汗腺から
汗くさいとか不快など、何かと疎んじられる汗ですが、発汗は人間が生命を維持するためには欠かせない重要な生理現象といわれます。
ご存知のように汗は、汗腺と呼ばれる皮膚の表面の穴(汗孔)から分泌されています。エクリン腺とアポクリン腺と呼ばれています。
エクリン腺は手のひら、足の裏、額などを中心に、数百万ともいわれる汗腺がほぼ全身に分布しているといいます。
アポクリン腺は脇の下や乳首、ヘソの周辺、下腹部、肛門周辺など、限られた部位にあって、毛穴を通じて汗を出すといわれます。
2つの汗腺から3種類の汗
この2つの汗腺から分泌される汗は、同じ汗ではあるのですが、それぞれ性質が違うようです。
汗は発汗のきっかけによって3種類に分類されるのだそうです。
「温熱性発汗」は暑いときや運動したときなどにかく汗で、いわゆる体温調節のための汗がこれにあたります。エクリン腺から分泌されます。
「精神性発汗」は、「冷や汗」「手に汗を握る」といった言葉のように緊張やストレス、驚いたときにかく汗。エクリン腺とアポクリン腺から分泌され、手のひらや脇の下、足の裏、額など、発汗場所は限定的のようです。
もう1つは「味覚性発汗」で、辛いものを食べたときに額や鼻から反射的にでる汗で、エクリン腺から分泌されるといいます。
汗は、ほぼ水。無臭のはずなのに?
エクリン腺から出る汗の99パーセントは水分だそうです。
残りは塩分がほとんどで、わずかにカリウムやマグネシウムなどのミネラルや乳酸、アンモニアなども含まれているといいます。
エクリン腺から分泌される汗には、においの原因物質はほとんど含まれていないということですが、汗を放置すると匂いを発することがあります。
匂いは汗そのものではなく、皮膚の表面の垢や皮脂を細菌が分解して、酸っぱいような、ぞうきんのような独特の匂いを発するのだそうです。
一方、アポクリン腺からの汗は、体温の調節には関与せず、異性を惹きつけるいわばフェロモンであるという説もあります。
水分の他に脂肪やタンパク質、アンモニアなどが含まれていて、ベタベタとした匂いがある汗を出します。ワキガなどがこれにあたります。
「良い汗」「悪い汗」の正体とは?
汗は血液からつくられるのだそうです。
汗腺には汗のもとをつくる部位があり、血液に含まれる体にとって大切なミネラル分は、そこでろ過されて血液に再吸収されるといいます。
このろ過機能によって、余分な成分が含まれない99%水分の汗が皮膚の表面から分泌されるというわけです。
こうしてできた匂いのない、サラサラした汗が、いわゆる「良い汗」で、蒸発しやすいので効率よく体の熱を放散してくれるそうです。
逆に、ろ過機能がうまく働かないと血液中のミネラル分が汗と一緒に皮膚表面に流れてしまい、ベタベタして蒸発しにくい汗になり、熱が放散しにくく、体温調節の効率が悪くなってしまうといいます。
これが「悪い汗」で、疲れやすく、熱中症にもなりやすいそうです。
たくさん汗をかく生活習慣を
「良い汗」は代謝機能を高め、血行の促進や美肌効果もあるそうです。
汗腺のろ過機能は汗をかくほど高まるといわれます。汗をかかないより、適度に汗をかくことで汗腺の機能を鍛えることができるそうです。
例えば
(1)ウォーキングなどの軽い運動を習慣にして汗をかく機会を増やす。
(2)冷房の温度が低いと汗腺の機能が低下するおそれがあるので、自宅の設定温度は外気温との差を5℃以内にする。
(3)職場などでは冷房の風が直接当たらないようにしたり上着を羽織るなどの注意を。
(4)入浴の際は、シャワーよりも37〜38℃のぬるめのお湯で半身浴が効果的だそうです。
これからの季節、汗をかくことをいとわず、水分をしっかりとって、良い汗をたっぷりかきましょう。
<参考>
*「汗の基礎知識」(花王株式会社)
*「手に汗って なんでかくの?」(久光製薬株式会社)
*「あなたの汗は、良い汗? 悪い汗?」(サントリー健康情報レポート)
*「ベタベタ汗をサラサラに 良い汗を流そう!」(生活クラブ共済連)