冬の入浴、ヒートショックは世代を超えて
冬本番。熱いお風呂が恋しくなる季節。でも、冬はヒートショックによる事故が多発します。
「あつ湯」は危険
木枯らしが吹く季節は、帰宅後に熱いお風呂に入ってほっこりとしたくなりますね。
日本人は世界の中でも熱いお風呂を好むことで知られています。
昔は、江戸っ子のあつ湯といって、どんなにお風呂が熱くても江戸っ子は「ぬるい、ぬるい」とやせ我慢をして入っていたといいます。50℃くらいのあつ湯でも平気な顔をして入っているのが粋だといわれていたそうです。
でもそれも昔の話。現代では、熱いお風呂は体に大きな負担がかかって、ヒートショックの危険性が高まることが知られています。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく乱高下して血管や心臓に大きな負担がかかることをいいます。 血圧の変動は心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中を起こすなどして、入浴中に亡くなる人が毎年後を絶ちません。
厚生労働省の『人口動態統計(令和3年)』によると、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は4,750人で、交通事故による死亡者数2,150人のおよそ2倍を超えているといいます。
若い世代も油断は禁物
ヒートショックは高齢者に起こるものと決めつけてはいけません。
65歳以上の高齢者に多いのは確かですが、実は若い世代もヒートショックを起こして入浴中に事故を起こすことがあるそうです。
急激な寒暖差で起こる血圧の乱高下は、若い世代でも体に大きな負担がかかります。寒さで血圧が急激に下がることで、転倒したり、めまいや立ちくらみを起こしたり、意識を失うなどして、ケガや湯船で溺れて死亡するケースもあるといいます。
こんなときは危険
若くて健康に自信があるという人も、ヒートショックを起こす可能性があるので、気をつけて。
とくに睡眠不足や疲労がたまっているとき、お酒を飲んだあとなどはヒートショックに注意が必要です。
また、肥満や糖尿病の人は、動脈硬化がすすんでいるので、血圧が上がれば心筋梗塞などのリスクが高まるといわれています。
自宅だけでなく、旅先でも飲酒後に入浴したり、冬の露天風呂にいきなり飛び込んだりするのは大変危険です。
入浴事故を防ぐために心がけたいこと
ヒートショックは、10℃以上の温度差がある場所ではとくにリスクが高まるといわれています。
以下の点に気をつけて、快適に安全に冬のお風呂を楽しみましょう
(1)入浴前に脱衣所や浴室を暖める
お湯を浴槽に入れるときはシャワーから給湯するか、お風呂がわいたら十分にかきまぜて蓋をはずして、蒸気で浴室の温度を上げるようにしましょう。
(2)食後や飲酒後、服薬後すぐの入浴は控える
食後低血圧といって食後に血圧が下がりすぎて失神することがあるそうです。 また、飲酒によっても一時的に血圧が下がるので注意が必要です。精神安定剤や睡眠薬等の服用後も入浴は避けましょう。
(3)お湯の温度は41 ℃以下、つかる時間は10 分までを目安に
42℃以上の熱い湯に入ったり長時間湯船につかっていると、血圧が高くなったり体温が上がりすぎて意識障害や脱水症状を引き起こすことも。
また脱水状態になると脳梗塞などを起こすリスクも高まります。「41 ℃以下のお湯に10 分まで」を目安にしましょう。
脱水予防には入浴前にコップ一杯の水を飲むのむことも大事なポイントです。
(4)浴槽から急に立ち上がらない
湯船から急に立ちあがると貧血状態になって、立ちくらみを起こしがち。浴槽のふちにつかまるなどしてゆっくりと立ち上がりましょう。
入浴時以外も要注意
ところで、ヒートショックを起こすのは入浴時だけとは限りません。
暖かい寝床から出てトイレに行ったり、寒い部屋に行ったり。また薄着のまま外にゴミ出しに行ったりすることもヒートショックを起こす危険性があるのです。
「ちょっとだけだから」と考えてはだめ。油断せずに防寒対策をしっかりしてヒートショックを防ぎましょう。
<参考>
※「冬場の風呂 ヒートショックに注意」(東京新聞 2023.2.5)
※「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(消費者庁)
※「交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」(政府広報オンライン)