プラスコラム
PLUS COLUMN

男性は自分の更年期を「認めたくない」?

女性と同じように男性にもある更年期障害。

近年、徐々に知られてきたようですが、何が判断をじゃましているのか、それを素直に認めたくない男性が少なからずいるようです……。

 

男性ホルモンの低下が原因か

男性の更年期障害は「加齢男性・性腺機能低下症」とか「LOH(ロー)症候群」などと呼ばれる病気で、ED(勃起不全)、関節や筋肉の痛み、イライラなど体と心に様々な不調が現れます。

こうした不調は男性ホルモンの1つテストステロンの減少によると考えられています。

女性の更年期が閉経前後の10年間などと期間が決まっているのとは違い、男性の更年期は40歳〜64歳くらいまでといわれます。

個人差もあるようですが、40歳を過ぎる頃からテストステロンが少しずつ低下し始めます。

テストステロンは緩やかに減少していくために、女性の更年期障害のように強い心身の不調が現れることは少ないようですが、前述の不調の他にも、意欲の喪失や不安、不眠、うつ、疲労感などが見られるようです。

 

早めに受診する男性は少数派

 女性の更年期障害の多くは、閉経後5年ほどで自然に落ち着くといわれますが、男性の更年期障害は、放っておいても心身の不調は改善せず、ただ長引くだけといわれます。医療機関での適切な対応が必要なようです。

 厚生労働省の「更年期症状・障害に関する意識調査」(2022年3月)に興味深い数値が示されていました。

男性が自分のなんらかの更年期症状を自覚してから医療機関を受診するまでの期間について、「すぐに(1か月未満)」「1か月程度してから」「3か月程度してから」を合わせた割合は、40〜49歳では9.2%、50〜59歳では6.1%、60〜64歳では4.2%でした。

 また「2年以上してから」受診した割合は、40〜49歳では2.2%、50〜59歳では2.9%、60〜64歳では2.4%でした。

 

心身の不調は、放っておいても治らない

 一方で「受診していない」割合は、40〜49歳では86.6%、50〜59歳では86.5%、60〜64歳では92.8%でした。

 更年期世代の男性の圧倒的多数は、自分になんらかの更年期特有の症状があっても、医療機関を受診しないで不調を「がまん」したり、「過ぎ去るのを待つ」かして、その場をやり過ごそうとしているのでしょうか。

 繰り返しますが、男性の更年期障害は、「放って」おいて「治る」ものではないそうです。

 

男性の半分は「更年期をやり過ごす」

 花王株式会社「生活者情報開発部」が行なった『男性の更年期の意識実態調査』(2021年12月)では、40〜50代の男女それぞれの更年期に対する意識の違いがよく出ています。

それによると、「更年期への向き合い方」でもっとも多かったのは「更年期をやり過ごす」(男性51%、女性44%)でした。

また、「病院に行く」(男性9%、女性17%)と「友人と話す」(男性12%、女性22%)では男性は女性の約半数で、さらに「(更年期を)認めたくない」女性は5%なのに対して、男性は15%と女性の3倍でした。

 男性にとって更年期の話題は、あまり他人に話したくない、できれば避けたいテーマのようです。

 

5人に1人は「誰にも知られたくない」

 そんなわけでしょうか、更年期の症状がある男性(45〜64歳)が不調の協力や理解を望む相手の断然トップは「配偶者・パートナー」(64%)。

また「誰にも知られたくない」(19%)がやっぱり(?)堂々の2位。

以下、「同僚や先輩」(15%)、「友人」「専門家(医師・カウンセラー)」(いずれも12%)でした。

「外に出れば敵だらけ。男はいつも孤独なもんだねえ」……って、カッコつけないで!

 受診科は、泌尿器科だそうですから!

 最近は男性更年期障害の専門外来もあるそうです。

 

<参考>

*「更年期症状・障害に関する意識調査(令和4年)」(厚生労働省)

*「最新版 更年期障害 これで安心」(小学館)

*「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)とは」(一般社団法人 日本内分泌学会)

*「男性の更年期の意識実態調査」(花王株式会社)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。