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意外と知られていない男性更年期の仕組みとは?

女性の更年期の陰に隠れてかどうか、男性の更年期(障害)を知る人はいまだに少ないようです。

男性ホルモンの低下によって起こるということですが、生活や環境の変化がきっかけになることも多いといいます。

加齢だけが原因ではない男性の更年期について考えてみました。

 

男の更年期「知っている」30代で1割?

「更年期障害」といえば、たいていの人は「女性(だけ)」に起こる体の不調という理解かもしれません。

 最近は自分の体への理解が進んだせいか、男性にも更年期があると考える人もいるようですが、やはり少数派で、ほとんどの男性にとっては「男性更年期」は未知の領域のようです。

 実際、厚生労働省が令和4(2022)年3月に行った「更年期症状・障害に関する意識調査」によれば、「男性にも更年期にまつわる不調がある」ことを「よく知っている」と答えた男性はわずかです。

世代別に見ると、20代で9.6%、30代で10.6%、40代で10.1%、50代が15.7%、もっとも割合が高い60〜64歳でも16.5%にとどまりました。

「知らない」または「聞いたことはあるが、内容について詳しく知らない」と答えた男性がほとんどで、20〜40歳の各世代の9割を占めています。

 

男性ホルモンの分泌低下が原因?

 個人差はあるようですが、一般に女性の更年期が45歳〜55歳ごろといわれるのに対し、男性の更年期は40歳以降といわれます。

 女性の更年期障害は閉経による女性ホルモンのエストロゲンの減少によるもので、加齢によるいわゆる「自然な現象」ともいわれます。

それに対して、男性の更年期障害は男性ホルモンのテストステロンの分泌量の減少が原因で起こるといわれます。

 テストステロンは、「筋肉や骨を強くする」「性機能を正常に保つ」「行動力や判断力などの認知機能を高める」のほか、意欲を高めたり、抗炎症作用などの働きがあるとされています。

 

意欲や集中力の低下、不安感などが……

男性の更年期障害は「加齢男性性腺機能低下症候群(LOW<ロー>症候群)」と呼ばれる病気で、体と心に様々な不調が現れます。

 男の更年期障害の症状でよくいわれるのが性欲の減退、勃起障害。他に関節痛や筋肉痛、ほてり、肥満、頻尿などがみられるようです。

 心の面では、眠れない、興味や意欲の低下、不安感、イライラ感、集中力や記憶力の低下、うつ症状などがあらわれるといわれます。

例えば、自分の日常を振り返ってみて、家族に当たり散らしたり、何かをするのが億劫になった、気分がふさぎがちになった、笑わなくなった、といったことが更年期障害のサインといわれているようなので、心当たりがあれば、泌尿器科を受診してみるのもいいかもしれません。

 

テストステロンを多く分泌させるには?

テストステロンは「社会性ホルモン」と呼ばれているようです。

テストステロンの分泌は、加齢よりも日常生活や環境、社会との関わり、ストレスなどの外的な要因に深く関わっていると考えられているのです。

 職場や家庭や、友人や知人、趣味などで、楽しくて心地よくて、リラックスしているときにテストステロンは分泌されるらしいです。

 スポーツやゲームで達成感を味わう、楽器に挑戦する、小説を書いて賞に応募してみるなど、生活を楽しむのはもちろんですが、「自分の居場所をつくる」ことがもっとも大切だという専門家もいます。

 テストステロンの分泌が減ると、生活習慣病や動脈硬化などの原因になったりするといわれます。

「男ホル(男性ホルモン=テストステロン)がいっぱい出てる!」……そう感じる毎日を過ごせたらいいですね。

 

<参考>

*「更年期症状・障害に関する意識調査(令和4年)」(厚生労働省)

*「男も更年期」(東京新聞/2022.7.12、7.19)

*「なぜ一流の男は勢力が強いのか?」(経済界)

*「男性の更年期障害とは?」(NHK健康チャンネル)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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