あなたの味覚の感度は鈍っていない?
キノコやサツマイモ、ブドウ、柿、栗、鮭など、おいしいものが旬を迎える味覚の秋が到来しました。
味覚といえば、近年では味覚と健康についての研究が注目されているようです。味覚と健康――果たしてどんな関係があるのでしょうか。
味覚と脳の関係
食べ物をおいしいと感じられるのは、味覚があればこそ。
新型コロナウイルスの後遺症で話題にのぼりましたが、味覚が障害されてしまうと何を食べておいしくなくて、砂を噛むような味気なさを覚えるといいます。
そもそも味は、舌にある「味蕾(みらい)」という味覚の受容体でキャッチされ、嗅覚で風味を感じることで、これらの感覚が脳へと伝達されておいしさを味わうことができるとされています。
基本4味から5味へ
味覚には、基本5味といわれる甘味、塩味、酸味、苦味、うま味があります。
かつて基本となる味の要素は、甘み、塩味、酸味、苦みの4味とされてきました。
しかしのちに日本人の科学者によって、うまみ物質のグルタミン酸ナトリウムが発見され、酸味、甘味、塩味、苦みに加える5番目の基本味として「うま味」と命名されました。
欧米では長い間「うま味」の存在を認めなかったそうですが、現在では学術的にも認められ「Umami」として世界中で広く知られています。
脂肪味は第6の味覚?
そして近年、九州大学のグループが脂肪に反応する舌の味蕾(みらい)細胞から脳に味を伝える「神経」を発見しました。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、それが「脂肪味」と呼ばれるもので、「脂肪味」は第6の味覚ではないかと注目されました。
脂質の多い肉類やケーキ、ポテトチップスなど脂質が多く含まれる食品が好まれる背景に、この脂肪味の存在があるのではないかとされています。
脂肪味に敏感な人は、少しの量でも脂肪味を感じ取れるために脂肪の摂取量が少なくてすみますが、脂肪味に鈍感な人は脂肪の摂取量が増えるために、肥満や生活習慣病になるリスクが高まると考えられているようです。
脂肪味は高脂肪の食品を食べ続けることで、鈍感になっていくと考えられています。
言い換えれば、脂肪味に敏感になることで肥満を遠ざける効果が期待できるといえます。
味覚の感度は上げられる?
脂肪味だけではありません。「うま味の感じにくい人ほど太りやすい」という研究結果もあるなど、現在は味覚に関する研究が盛んに行われているようです。
味覚のメカニズムについてはまだ解明されていないこともたくさんあるといわれています。
しかし、甘いものや味付けの濃いもの、脂っこい食べ物があふれている現代は、知らず知らずのうちに甘味や塩味、高脂肪の食品をたっぷりとり続けて、これらの味に鈍感になってしまう可能性があるようです。
味覚をキャッチする舌の味蕾は10日間で生まれ変わるために、味蕾が再生するのにあわせて味覚を鍛えることで、味覚感度をあげることができるといわれています。
まずは、過剰な味付けや偏った食事になっていないかを見直して、ゆっくりとよく味わって食べることを意識してみませんか?
秋の味覚をいっそうおいしく味わえるはずですよ。
<参考>
※「味覚」(ウィキペディア)
※クローズアップ現代「アナタは“脂肪味”を感じますか? 最新研究!味覚が健康を左右する」(クローズアップ現代2019年6月13日放送 NHK)
※「うま味」について(味の素株式会社)
※「うま味の知識」(日本うま味調味料協会)