「かわいい」と感じる音はどんな音?
形が「かわいい」、色が、しぐさが「かわいい」、なんとなく「かわいい」など、「かわいい」はどんな状況にも使える万能語かもしれません。
じつは音声にも「かわいい」と思わせる、ある法則があるというのですが……?
「かわいい」は日本ならではの文化?
どんなとき「かわいい」と感じたり、口にしていますか?
赤ちゃんに触れたり抱いたりしたとき?
パンダやネコやカワウソなどの動物を見たとき?
おいしそうなお菓子やスィーツに出合ったとき?
それともカラフルな洋服を見つけたとき?
「かわいい」は1970年代に若い女性を中心に使われ出したようで、今では女性の約8割がよく口にしているらしいです。
「かわいい」を辞書で引くと、「愛らしい魅力をもっている」「深い愛情をもって大切に扱ってやりたい気持ち」「幼さが感じられてほほえましい」「愛すべき」といった意味のほかに、「かわいそうだ」「いたわしい」「不憫だ」といった意味でも使われるようです(大辞林・第二版/三省堂)。
ただ若い世代の間では、「かわいい」がこうした本来の意味とは違う場面で使われ、年配の人たちからの反発もある一方、日本ならではの文化として認知されているようです。
「マ行」「パ行」の音は「かわいい」?
そんな「かわいい」ですが、商品のネーミングと深い関係があるらしいです。
じつは日本語の「マ行」の「マミムメモ」、「パ行」の「パピプペポ」、「バ行」の「バビブベボ」の音は「両唇音(りょうしんおん)」といって、発音するときに上と下の唇をくっつけて出します。
この両唇音が「かわいい」と感じる音なのだそうです。
新聞で紹介されていました(東京新聞/2022.10.2)。
両唇音には例えば「マンマ」とか「バーバ」「ブーブー」「ポンポン」などあります。
まるで赤ちゃん言葉のようです。
そうなんです。
新聞によると、この研究を行なった関西大学・熊谷学而准教授は「両唇音は、赤ちゃんが早い段階でいえる言葉であることと、くちびるをすぼめるしぐさがかわいいと感じるためではないか」と指摘しているそうです。
両唇音が入った商品はロングセラー?
両唇音や破裂音は赤ちゃんが好む音とよくいわれます。
「いないいないばあ」はその典型例かもしれません。
また例えば、赤ちゃん関連の商品をみると、「ムー〇〇」とか「パン〇〇○」など、紙おむつの商品名に両唇音が使われています。
絵本のキャラクターにも「バー」とか「ムー」「ブー」などの名前がついたロングセラーが多いようです。
ほかにもポッキー、ボーロ、マーブルチョコなどのお菓子も長く親しまれています。
商品ではありませんが、パンダはその見た目と名前のイメージがピッタリ一致。初来日以来50年経ちますが、今も変わらず動物園の人気ものです。
ペットの名前でも、今はあまり見かけませんが、イヌなら「ポチ」、ネコは「ミー」とつけるのが昔からの定番でした。
赤ちゃんが喜び、子どもも大人も「かわいい」と感じるという両唇音。
スーパーやデパート、書店、家電量販店などに行く機会があったら、両唇音をヒントにした商品名がついたものを探すのはいかがでしょう。
それが「かわいい」かどうかは、また別の楽しみの1つとして……。
<参考>
*「『かわいい音』を求めて」(東京新聞/2022.10.2)
*「音象徴の抽象性:赤ちゃん用オムツのネーミングにおける唇音」(熊谷学而・川原繁人)
*「『かわいい』ってなんだろう」(公益財団法人ニッポンドットコム)