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「同じ釜の飯を食うと絆が深まる」は本当だった!?

「同じ釜の飯を食う」という慣用句があります。古くからある言葉ですが、最近はこの言葉に科学的な根拠があることが分かってきました。

 

「同じ釜の飯を食う」の意味は……

仲間として生活を共にしたり、苦楽を分かち合った親しい仲間の例えを表す言葉として「同じ釜の飯を食う」があります。

スポーツのチームメートだったり職場の同僚などに親しみを込めて「同じ釜の飯を食った仲」と言ったりします。

でも、特に親しい間柄でなくても同じ空間で一緒に食事をするだけで緊張感が和らいだり、少しだけ距離が縮まったような感じがするものです。

なぜ、そのような気持ちになるのでしょうか?

そのキーワードとなるのが、脳内でつくられる「オキシトシン」というホルモンだそうです。

 

脳内ホルモン「オキシトシン」の効用

オキシトシンをご存じでしょうか。

愛と絆の形成に深くかかわるといわれているホルモンのことで、「愛情ホルモン」とか「絆ホルモン」などと呼ばれているようです。

良く知られているのが、オキシトシンは女性の妊娠・出産によりその分泌量が増えるということ。出産時には子宮を収縮させてお産を促進させ、出産後は赤ちゃんがおっぱいに吸い付くとオキシトシンの働きで母乳の分泌が促されることが知られています。

またオキシトシンには相互作用があって、赤ちゃんとスキンシップしたり、優しく見つめて話しかけると、赤ちゃんだけでなくママやパパにも分泌されるそうです。そのような働きがあることから、オキシトシンは親子の愛情と信頼の形成に大きく役立つといわれています。

 

一緒に食事をするだけでも?

オキシトシンの分泌は、親子の間だけに限りません。

恋人や夫婦、友人とのスキンシップや楽しいおしゃべり、またペットの触れ合いでもオキシトシンの分泌量が増えるそうです。

さらに最近の研究からは、誰かと一緒に食事をすることでもオキシトシンの量が増える傾向があることがわかったそうです。

つまり、特別なスキンシップがなくても、仲間と食べ物を分かち合うことでオキシトシンがもたらす効果を得られるといいます。

 

コロナ禍とオキシトシン効果

愛と絆を深めるオキシトシンには、安心感や信頼といった感情を引き起こしたり、ほかにも「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促す作用やストレスホルモンのコルチゾールを減らす作用もあるそうです。

コロナ禍では、食事を介したコミュニケーションの場が大幅に減ってしまいました。

それはそれで、誰かと食を共にするわずらわしさがなくなった、ストレスがなくなったとホッとしている人もいるでしょう

けれども同時に心身に安らぎをもたらすオキシトシンの効用を得る機会も減ってしまうのは、寂しいことかもしれません。

せっかく体に備わったオキシトシン効果を有意義に活用したいものですね。

 

 

 

<参考>

※「おいしいと感じる理由とは? 味覚と脳の関係について」(NHK健康チャンネル)

※「脳内ホルモンオキシトシン、心身に安らぎ」 (2014.7.13日本経済新聞)

※花王メリーズ「愛情ホルモンオキシトシン」(花王株式会社)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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