「重ね食べ」は歯周病の原因になる?
働く多くの人のランチ事情をおびやかすことになるかもしれない注目すべき研究結果がこのたび公表されました。「重ね食べ」と歯周病の関係についてです。ことによると日本の食文化の大きな転換点になるかも?
炭水化物の二重食べは日本の食文化?
多くの人には耳慣れた言葉かもしれません。
二重食べとか重ね食べ、多重食べなどと呼ばれたりもしますね。
主食の炭水化物を2つ、もしくはそれ以上を一緒に食べることです。
よくあるのはラーメンライス、チャーハンとラーメン、麺と丼物のセット(たとえばうどんと親子丼等々)、餅の入った力うどんなど、数多くの重ね食べの組み合わせがあります。
コンビニ食なら、おにぎりや菓子パン、いなり寿司とカップ麺の組み合わせでしょうか。
そんな国民的食習慣といってもいい(かもしれない)炭水化物の重ね食べが「ノー」のダメ出しを食ってしまったのです。
曰く「歯周病の原因になる」というわけです。
東京都健康長寿医療センター研究所が行った調査(バスの運転手・540人の男性対象)の結果が新聞で報じられました(東京新聞/2022.9.12)。
重ね食べは歯周病の発症が1.2倍?
この調査によると、ふだんからラーメンライス、ラーメンとチャーハンなど、炭水化物の重ね食べをしている人は80人(14.8%)いたそうです。
さらに彼らの歯を調べたところ、重ね食べをしない人と比べて、歯周病にかかった歯が約2割多かったということです。
さらに重ね食べをする人と、しない人の歯みがき習慣にも違いがみられたといいます。
重ね食べをする人は、しない人に比べて1日に2回以上の歯みがきと歯間ブラシを使う頻度が約2割少なかったというのです。
つまり重ね食べをする人は、しない人に比べて歯みがきの習慣が不完全なうえに、歯周病になる率が1.2倍ということになります。
研究グループは「重ね食べが歯周病の危険因子とまでは断定できない」とする一方、「有意な関連がある」と語っています。
歯周病には歯の喪失以外の影響が?
重ね食べが歯周病の危険因子というのは意外かもしれません。
「歯周病って歯が抜けるんだよね?」
たしかに歯周病は歯が抜ける原因の第1位(37.1%)といわれますが、ほかにも糖尿病や心疾患、脳卒中などのリスクを高めるともいわれています。
歯周病は今では30歳以上の3人に2人がかかっているといわれ、「国民病」と呼ばれることもあるようです。
重ね食べには歯周病以外にも注意すべき問題があります。
炭水化物(糖質)のとり過ぎです。
そもそも2つ以上の主食を食べること自体が食べ過ぎですし、1回の食事としては明らかなカロリーオーバー。
重ね食べを続けていると当然ながら肥満のリスクが高まるほか、血糖値の上昇を招き、糖尿病を引き起こす可能性もあるといわれます。
「好きに食べて何が悪い!」
でも重ね食べは、この国の隠れた食文化、食習慣の1つといわれます。
健康に悪いからといって簡単にやめられるものでしょうか。
たとえば料理の組み合わせを替えるのはどうでしょう。
主食の一方を野菜炒めとか、野菜サラダ、野菜の煮物などにするのは?
ただ、ポテトサラダやマカロニサラダ、餃子、肉じゃが、かぼちゃの煮付けなどは炭水化物(糖質)を含んでいるのでサイドメニューとして選ぶのは要注意だそうです。
やはりあれもダメこれもダメじゃ、せっかくの食事が楽しくないですね。
「腹がへっているんだ、好きなように食べさせて!」
そんな怒りの声が聞こえてきそうです。
わかります。でもやっぱり「腹も身の内」っていいます。
空腹にまかせて食べ過ぎないようにくれぐれも注意を……。
<参考>
*「主食の重ね食べ ご用心」(東京新聞/2022.9.11)
*「平成28年歯科疾患実態調査」(厚生労働省)
*「歯周病について〜歯周病の解説」(ライオン)
*「第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書(2018年)」(公益財団法人 8020推進財団)