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増えている!? スマホ内斜視

目の視線の向きが内側に寄って戻らなくなってしまう内斜視。

近年は、デジタル機器の使いすぎが原因で、急性の内斜視になる人が増えているといわれています。

 

突然発症するのが特徴

 内斜視には先天性と後天性のものがありますが、突然発症するのが急性内斜視と呼ばれるトラブルです。

 急性内斜視になると、眼球が寄り目の状態になり、遠くを見ても寄り目が戻らなくない状態になってしまうそうです。

また、物が二重に見える「複視」と呼ばれる状態になることもあるといいます。複視になると、遠近感や立体感がつかみにくくなるために、思わぬ事故につながることがあるので気をつけて。

 

スマホ内斜視にご用心

 デジタル機器の使いすぎで起こる急性内斜視は、いわゆる「スマホ内斜視」とも呼ばれているようです。

2016年に、初めて海外でスマートフォンの使いすぎによる急性の内斜視が報告され、その後日本でも相次いで同じような症例が報告されるようになったそうです。

スマホやタブレット、パソコンなどデジタル機器は、今やなくてはならないツールです年々利用時間が増えていますが、コロナ禍ではデジタル機器を見続ける時間がさらに増えたといわれています。

専門家はデジタル機器の使い方に注意するよう、警鐘を鳴らしています。

 

寄り目が元に戻らなくなる状態に

 でもなぜ、デジタル機器の使いすぎで、急性の内斜視が起こるのでしょうか。

内斜視に関係するのが、目を動かすときに使う内直筋と外直筋と呼ばれる筋肉です。私たちの目は、近くの物を見るときには内直筋が縮んで外直筋が伸び、遠くの物を見るときには、外直筋が縮んで内直筋が伸びるそうです。

 遠くのものと近くのものをバランスよく見ていれば問題はないのですが、近くのものばかり長時間見続けていると、内直筋が縮んだままの状態なって元に戻らなくなってしまうそうなのです。これが急性内斜視と呼ばれるものです。

 

まずは目を休めて

 急性内斜視になってしまったら、まずはデジタル機器の使用を控えて目を休ませることが大事です。

それでも改善しない場合は、プリズムレンズの入った眼鏡で矯正したり、場合によっては手術をすることもあるそうです。

 また、急に起きる内斜視の原因にはデジタル機器使用以外の原因もあるそうです。

変だなと思ったら、放っておかずにまずは眼科を受診することをおすすめします。

 

酷使しがちな目をいたわろう

 総務省の調べによると、インターネットの利用項別利用時間は、全世代で多いのが、全年代では、平日は「メールを読む・書く」かが最も長く40.8分、休日は「動画投稿・共有サービスを見る」が58.0分と、最も長い結果が出ています。

 仕事でもプライベートでも長時間手放せなくなったデジタル機器。それだけ目に大きな負担がかかっていることは間違いないようです。

急性内斜視など目のトラブルを防ぐためには、どうしたらよいのでしょうか。

専門家はスマホなどを見るときには、画面から目を30センチ以上離すこと、30分に1回は遠くを見ること、また電車の中では画面が揺れるのでできるだけ使わないこと、暗いところや寝る前の使用は避けるといったことをアドバイスしています。

 目にトラブルが起きれば、日常生活にさまざまな支障が出てきます。ふだんから意識的に目を休めて、酷使している目をやさしくいたわってあげたいものですね

 

<参考>

※「スマホが原因!? 緊急報告 急性の内斜視」(『きょうの健康』NHK出版 2021年10月号)

※『ウィメンズメディカ』(小学館)

※令和3年度版『情報通信白書』

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。