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飲酒後の〆ラーメンが食べたくなるのは人間の本能!?

外のみでも家のみでも、〆にラーメンやそばなどを食べたくなることはありませんか?

いけないことと知りつつも、ついつい手が出てしまうけど、何か理由があるのでしょうか?

 

肝臓は地味だけど働き者

 お酒の話にいく前に、予備知識としてお酒とは切っても切れない臓器「肝臓」のお話をしましょう。

 地味な臓器の印象がある肝臓ですが、みなさんは、肝臓の働きをご存じですか? 肝臓には、

(1)脂肪の消化・吸収を助ける胆汁の生成。(2)アルコールや薬などを分解し、無毒化して体外へ排出する解毒の働き、

(3)食べ物から吸収された栄養を体が利用しやすい形に作り変える「代謝」と、代謝によってつくられた栄養成分の一部を「貯蔵」する働きがあるといいます。

 多様な機能を担って休むことなく働く肝臓は、体の中の「化学工場」と称されているそうです。

 

アルコールがもたらす偽の食欲

さて、お酒の話に戻りましょう。私たちがお酒を飲むと、飲んだアルコールが肝臓で分解されます。このときに消費されるのが「血糖」だそうです。そのため、私たちの体は下がった血糖を元に戻そうと反応し、同時に脳にも「食べろ」という信号を送って血糖値を上げようとします

つまり、実際にはおなかがすいていなくても、脳が勘違いしてエネルギーを得ようとした結果、糖質(糖・炭水化物)の多いものをついつい食べてしまうということになります。

 

ラーメンが食べたくなるワケ

もうひとつ。アルコールを飲むと体が欲しがるものがあります。それが、水分と塩分です。

アルコールには利尿作用があります。アルコールを飲むとトイレが近くなるのもそのせいです。体から水が失われるとき、同時に体内からナトリウム(塩分)などが失われるといいます。

つまり、お酒の〆に欲しくなるラーメンなどの麺類は、飲酒後の体が欲する「塩分」「水分」「糖質」の条件がそろっているといえます。

ところで、同じ「糖」でもお酒の〆は、スィーツという人も少なくありません。シメパフェ専門店なるのものあるようです。

〆ラーメンと同じように、脳の命ずるまま別腹で甘いものを楽しんでしまうというわけです。

またアルコールは脳を麻痺させる性質があるので、ふだんは食事に気をつけている人も、酔うと「ま、いいか」という気になって暴飲暴食しまうようです。

 

飲酒後の〆は肝臓に負担

 お酒をたくさん飲んで、欲望のおもむくまま食べるとその瞬間は幸せな気分に浸れますが、翌日は胃がもたれたり顔がむくんだり。

また暴飲暴食は、肝臓に大きな負担がかかりますし、生活習慣病や肥満にも直結します。

 お酒を飲んだあとに、「ラーメンだ」「パフェだ」と、がっつり糖質をとりたくなったら「待てよ。これは脳が勘違いして起こったまぼろしの食欲なんだ」と自分に言い聞かせて、ぐっとがまんを!

 たいていの場合、翌日起きると「ゆうべはなぜあんなにラーメンが食べたかったんだろう」と不思議に思えるはずでしょう。

 

<参考>

*「STOP! 肝脂肪」(『栄養と調理』2020年1月号 女子栄養大学出版部)

*「シメのラーメンが食べたくなる理由」(三豊・観音寺市医師会)

*「肝臓病 予防と治療の新常識」(『きょうの健康』通巻201号 NHK出版)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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