プラスコラム
PLUS COLUMN

漢方は女性の不調の強い味方です

私と漢方の出会い

冷えやむくみ、肩こり、便秘、頭痛、肌荒れ、イライラ・・・はっきり「病気」とまでは言い切れないけれど、気になる不調をもっている女性は多いですよね。
実は、私も昔はそうでした。私の場合は、にきびが悩みのタネでした。
話は研修医時代までさかのぼります。そのころの私といえば、アゴから首にかけて真っ赤に膿をもったにきびがびっしりできて、鏡をみるたび大きな大きなため息をついていたのです。
 

もちろん塗り薬や抗生物質などで治療をし、化粧品を変え、「肌によい」といわれる健康食品を取り入れるなど、涙ぐましい努力をしていました。けれども、ありとあらゆるものを試しても治らない。「もうだめかも・・・」とあきらめかけていたのです。

そんなとき、知り合いで漢方薬局を営まれる家のお嬢さんから「試してみませんか」とすすめられたのが漢方だったのです。研修医としてバリバリの西洋医学を学んでいるときでしたから、漢方にはほとんど期待をもたず「とりあえずのんでみよう」という気持ちでした
 それから3カ月。数年間悩まされ続けてきたニキビが、漢方で見事に治りました。「漢方ってすごい・・・」これが私と漢方との出会いです。

女性特有の不調や「気のせい」「年のせい」といわれた症状も漢方の得意分野

漢方医学と西洋医学の大きな違いが、健康と病気に対する考え方です。
西洋医学では、何らかの症状を訴えて病院を訪れると、診察に続き原因となる異常がないかどうか、いろいろな検査を行います。そして、画像や血液データなどではっきりと異常が認められてはじめて病名を診断し、具合の悪い臓器や器官に直接働きかける治療を行います。しかし、特に異常が認められないものは、痛みには鎮痛剤といった対症療法は行いますが、積極的な治療の対象にはなりません。

一方、漢方医学では何か困った症状があれば「心身のどこかがバランスを崩した状態」ととらえ、そのバランスを整えることによって症状を改善するとともに、背景にある体質をも改善することを目指して治療を行います。ですから、冷えやむくみなど何らかの症状があって検査を受けても異常がなく、病気とは診断されない状態を漢方では「未病」と呼び、病気の前段階として重要な治療の対象と考えます。そして、その人の体質や性格、生活環境などから総合的に判断して、個人にあったトータルケアとしてアプローチします。ですから、月経トラブルやPMS(月経前症候群)、更年期、自律神経失調症など、環境やストレスに影響を受けやすい女性ホルモンや自律神経の乱れなどからくる女性特有の不調は、漢方がもっとも得意とする分野です。

 

また、花粉症などのアレルギー疾患、不眠・イライラ・抑うつ状態といった心の不調なども漢方が得意とします。これまで器質的な異常がないために「気のせい」「年のせい」といわれて、がまんしていた不調も漢方では積極的に治療をしていきます。

漢方のもうひとつのよさは、ひとつの漢方薬で複数の不調がケアできることです。西洋医学では、頭痛があるときは鎮痛剤を、せきが出るときはせきどめ、といった形でピンポイントの治療を行うことが多いのですが、漢方医学では症状だけでなく体質の改善も併せて行うことで複数の症状が改善し、からだ全体のバランスがととのっていくのです。

 

また漢方薬は、天然の動植物である生薬を2種類以上、ときには10種類以上もくみあわせてつくられます。これらの成分がお互いに助け合って相乗効果を上げるとともに副作用が出にくいよう工夫されています。

では、具体的にどんなふうに、診察していくのか。次回は、漢方の病気診断の見立てについてお話します。

プロフィール

渡邉 賀子 先生
漢方外来
渡邉 賀子 先生

麻布ミューズクリニック院長
医学博士・日本東洋医学会専門医・指導医

久留米大学医学部卒業。熊本大学第三内科に入局、内科を修める。
1997年、北里研究所にて日本初の「冷え症外来」を開設。
2003年、慶應義塾大学病院漢方クリニックにて、女性専門外来「漢方女性抗 加齢外来」を開設。現在も引き続き担当している。
慶應義塾大学医学部漢方医学センター非常勤講師