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若い女性に多いバセドウ病(甲状腺機能亢進症)

甲状腺機能の異常は、女性に多くみられる病気のひとつ。女性は、男性の7~8倍も多く発症するといわれています。一般にはなじみが薄い病気ですが、ミュージシャンの絢香さんが「バセドウ病」を患い、闘病中であることを告白してから、世間に広く知られるようになりました。「最近なんだか疲れやすい」という人は、必見です!

体の調子を整えてくれる甲状腺ホルモンを分泌

甲状腺というのは、のどぼとけの下に位置する、蝶が羽を伸ばしたような形をしている重さは15グラムほどの臓器です。健康な人の甲状腺は、通常は手で触れてみてもわかりませんが、病気があると、甲状腺が腫れて大きくなったり、硬くなったりしてきます。


甲状腺は食物中のヨードを材料にして甲状腺ホルモンを合成・分泌しています。甲状腺ホルモンは、代謝活性にかかわるホルモンで、全身の細胞の新陳代謝を高め、あらゆる臓器の働きを促進する作用をもっています。
この甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう状態が甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)で、代表的な病気が今回お話しする「バセドウ病」です。
反対に、甲状腺ホルモンが不足した状態は甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)です。
どちらも、「自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)」といって、自分の体を守る働きをする「免役」が、なぜか自分自身の正常な組織や細胞を「異物」と誤認して抗体をつくり、自分の組織や細胞を攻撃してしまう病気です。

イライラ、暑がりなど、不定愁訴に似た多彩な症状が……

20~30歳代の女性に多いのが「バセドウ病」です。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、新陳代謝が必要以上に高まって、体の機能がフル回転している状態になります。そのため、以下にあげるようなさまざまな症状が現れてきます。

甲状腺機能亢進症で現れる主な症状

□ 異常にイライラする。
□ 疲れやすい
□ 少し動いただけでも心臓がドキドキする。
□ 暑がりになり、汗かきになる。
□ 落ちつきがなくなる。早口になる。
□ 食欲があるのに体重が減る。
□ 手足が震える。
□ 眼球が飛び出る。
□ 甲状腺が腫れる。

流・早産しやすく、骨粗しょう症にもなりやすい

上にあげた症状以外にも、甲状腺機能亢進状態で妊娠すると、流産や早産をしやすくなります。妊娠してもすぐに流・早産をしてしまうので、調べてみたらバセドウ病だったというケースも少なからずあります。さらに、骨の代謝も速くなりますから、放っておくと骨粗しょう症にもなりやすいなど、バセドウ病は女性にとって見逃せない病気なのです。
バセドウ病に限らず、甲状腺の異常は、いわゆる不定愁訴といわれる症状が多いため、病気が見落とされていることが少なくありません。


上の項目にチェックが3つ以上ついた人や流・早産しやすい人は、バセドウ病を疑って甲状腺の検査を受けることをおすすめします。受診は内科でもよいのですが、できれば専門家である内分泌科を受診することをおすすめします。
なお、日本甲状腺学会では、ホームページ(http://thyroid.umin.ac.jp)で学会の専門医を都道府県別に公開していますので、参考にしてください。

プロフィール

宮川 めぐみ 先生
内科(内分泌・代謝)
宮川 めぐみ 先生

虎の門病院 内分泌代謝科勤務

東京女子医大を卒業後、東京女子医大内分泌センター内科に勤務。助手、講師を経て平成16年より虎の門病院健康管理センターに勤務。現在同病院の内分泌代謝科に所属し、甲状腺や糖尿病などの代謝疾患の診療にあたっている。
平成16年より東京大学腎臓内分泌代謝科の非常勤講師を兼任。
また厚生労働省の薬事食品衛生審議会専門委員も担当している。
医学博士、日本内科学会認定専門医、日本内分泌代謝専門医・指導医、日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医、マンモグラフィ読影専門医

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