
鍋料理は幸せと平和を招く?
冬の定番料理といえば、やはり「鍋」ですよね。
あたたかい鍋を囲むと幸せな気持ちになり、家族や友だちとのきずなも深まるといわれますが、本当でしょうか?
鍋料理を食べるとやさしくなれる?
冷えた体を芯から温めてくれる鍋料理。
鍋は寒いこれからの季節には欠かせない日本の食の原風景といっていいかもしれません。
湯豆腐、寄せ鍋、しゃぶしゃぶ、すき焼き、おでんなど、おなじみの鍋をはじめ、しょっつる鍋に石狩鍋、アンコウ鍋といった地方ならではの鍋まで、その種類はまさに無限。
日本に生まれてよかったと思わせるそんな鍋料理には「幸せ」とか「やさしさ」「ぬくもり」といった言葉を連想させるものがあるといいます。
というのも温度と感情を感知する脳の部位はほぼ共通しているらしいのです。
身体的温度と感情的温度の感知部位は同じ?
たとえばテレビで、ほんわりと湯気が立っている鍋料理とともに家族が映るCMを見たら、ほとんどに人は家族の「団らん」や「あたたかさ」「きずな」を連想するでしょう。
逆に、あなたが寒さと仕事で疲れて帰宅したときに家族から冷たいご飯や味噌汁を出されたら、感情が逆流しそうになるでしょう。
「敵対」や「孤立」「冷たさ」を想像してしまうかもしれません。
脳は、温度的なあたたかさを感じる部位と、感情的なあたたかさで反応する部位がほとんど同じなんだそうです。
あたたかい料理と「ほっこり」「ぬくもり」は対をなす関係かもしれませんね。
湯気の向こうに幸せが見える……常套すぎて使い古された言葉ですが、これってもしかして鍋料理のことだったのかも……。
においから遠い記憶がよみがえる?
ところで「プルースト効果」って聞いたことありませんか?
香りによって過去の記憶や感情を思い出す現象をそう呼ぶのだそうです。
フランスの作家、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という作品の中で「私」が紅茶にひたしたマドレーヌを口にしたとたん、遠い過去の記憶があふれてくるという話がもとになっています。
そんな記憶を呼び覚ますような香り、におい、おそらく誰にでもあるのでは?
たとえば夕暮れの住宅街、どこからか漂ってくるカレーのにおいと子ども時代とか、沈丁花のにおいと元カレ(元カノ)の思い出など……記憶を呼び覚ますようなにおいは脳のある部分を活性化させて、その人を気持ちのよい、幸せで、あたたかな気分にさせるといわれます。
鍋料理を囲めば争いも減る?
においに限らず、味や音などにもこうした無意識の記憶が呼び起こされる効果があるともいわれます。
「あっ、これ……どっかで……」
そんな瞬間、あるでしょう?
というわけで鍋料理は、あたたかさと、(出汁の)においと、味覚と、(グツグツという)音と、4つの幸せもたらし効果が期待できるすぐれた食べ物といえそうです。
鍋料理を囲むと社会の争いごとも減る?
なんて発想も案外、「笑止!」……と片付けられないかも?
<参考資料>
*「おでんできずなを」(東京新聞日曜版/2018年12月23日)
*「筆洗」(東京新聞/2018年9月25日)
<参考URL>
*「【鍋料理】教室」(紀文)
https://www.kibun.co.jp/knowledge/nabe/basics/syurui/