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ご用心!食中毒の季節がやってきた

この時期、「ひと晩寝かせたカレーで食中毒を起こした」といったニュースが新聞やテレビで見かけることがあります。
「え? 昨日のカレーで食中毒?」と驚いた方も多いのではないでしょうか? 

食中毒といえば、生モノのイメージが強いのですが、加熱した料理でも食中毒が起こるのが怖いところ。

食中毒は、5月から10月までに年間の約6割も発生するといわれます。

そこで、今回から数回に分けて、意外と知らない食中毒のお話をお送りします。

 

腐った食べ物=食中毒の原因ではない

「ん? この食品まだ食べられるかな?」そう思ったとき、みなさんはどうしますか? 

まずニオイをかいだり、ちょっと味をみて、腐ったニオイや酸っぱい味がしなければ大丈夫と思っている人も多いのでは。

 

でも、ちょっと待ってください。

実は腐った食べ物=食中毒の原因ではありません。

安全な食べ物かどうかを見わけるときに、見た目や味、ニオイだけで判断すると、思わぬ落とし穴があるので注意が必要です。

では、食中毒と腐った食べ物はどこか違うのでしょうか。その違いを見ていきましょう。

 

食中毒菌がついていても、見た目も普通で異臭もしない

そもそも食中毒は、食中毒菌がついた食品を食べて起こります。

原因となるものはさまざまで、細菌、ウイルス、毒キノコやフグ毒などの自然毒、原虫・寄生虫、農薬や洗剤などの化学物質性の食中毒もあるそうです。

 

さて、これらの食中毒の中でもっとも多くみられるのが細菌性の食中毒。

サルモネラ菌、病原大腸菌(О-157)、ボツリヌス菌、赤痢菌など、有名な食中毒の原因の多くは細菌性です。

死に至るケースもある食中毒ですが、食品の中で食中毒菌が増えていても、味もニオイも見た目も変わらないのが怖いところ。

また、食品の鮮度とも関係なく起こるそうですから、知らずに食べて食中毒を起こすケースがあとをたたないのです。

 

一方、腐った食べ物は、腐敗菌が原因です。

食品の成分が変質して、悪臭を放ったり食べられなくなったりします。

腐った食べ物を食べておなかが痛くなることはありますが、その中に食中毒菌がいなければ、食中毒にはなりません。

ただし、腐った食品には食中毒菌が繁殖している可能性も高いそうですから、傷んだ食べ物には、やはり十分な注意が必要です。

 

ちなみに、微生物によって食べ物の成分が変質することで保存性が高まったり、旨味が出るなど、人間にとって有用な場合は、「発酵」といい、逆に人間にとって有害な作用となるものを「腐敗」というそうですよ。

 

いかがでしたか? 

食品は変なニオイや味がしなければ大丈夫といった油断は禁物。

今の季節、食中毒から身を守るためには、食べ物に細菌を「つけない」、食べ物についた細菌を「増やさない」、食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」という3原則が鉄則だそうですよ。

 

<参考図書>

*「絵でわかる食中毒の知識」(講談社:伊藤武、西島基弘)

*「食中毒」(汐文社:伊藤武)

*「食中毒を防ぐ3つの原則・6つのポイント」(政府広報オンライン) 

http://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/

 

*「食の安心パトロール」(東京都福祉保健局) 

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/shokupato_hataraku/poisoning/tips.html

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。