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熱を下げれば風邪は治る?

電車やバスに乗るとマスクをした人やせき、くしゃみをする人が目立つ季節になりました。風邪といえば「せき」「くしゃみ」「鼻水・鼻づまり」そして「発熱」・・。いまいましい風邪症状ですが、これらの症状は全部、体の防御反応なんだそうです。ということは、つらくてもがまんしろっていうこと・・ですか?

 

鼻水、せき、くしゃみなどの風邪症状は体の防御反応・・?

「どうも風邪気味で・・」とか「風邪は万病の元」などとよくいいます。

風邪をひいたことがない人はいないと断言してもいいくらい、とてもなじみ深い風邪ですが、正式には「風邪症候群」と呼ばれるそうで、ウイルスがのどや鼻の粘膜にくっついて上気道(鼻やのど)に炎症を起こすことの総称だそうです。

 

ウイルスがのどに感染すると、のどの腫れやのどの痛み、鼻詰まりなどを引き起こし、鼻に付着するとくしゃみや鼻水などがでたりします。・・「風邪をひいた」というわけですね。

もともとのどや鼻、気管から肺に至る呼吸器には、空気中のウイルスや細菌が体内に侵入しないようにする防御システムが備わっているらしく、風邪のウイルスがのどや鼻に付着して炎症を起こすと、せきやくしゃみ、痰や鼻水などの防御反応が起こり、ウイルスを体の外へ排除しようとしているというのです。

 

さらに発熱は、免疫のはたらきを高めてウイルスが増えるのをおさえる役割があります。ウイルスの侵入によって、体に異変が起こったことを知らせる警告の意味も発熱にはあるということです。

つまり、鼻水も発熱もせき、くしゃみなどの風邪症状は、免疫のはたらきが活発になって引き起こされたということなんだそうです。これらのどれも不快な症状ですが、すべては体を守るための防御反応だということなんですね。

 

解熱剤で熱を下げても風邪は治らない・・?

せきには「せき止め」、熱には「解熱剤」・・「風邪をひいたな」と思ったら、多くの人は薬で風邪を治したい、不快な症状をできるだけ和らげたい、しずめたいと思いますよね。

でも風邪を治す薬はありません。残念ながら風邪の原因となっているウイルスをやっつける薬は市販されている薬にはないといわれています。

 

「でも風邪薬が売られているじゃないか」・・。

ドラッグストアなどで売っている風邪薬は、発熱やせき、くしゃみ、鼻水などの風邪の症状を和らげるためのもので、風邪のウイルスには効果がないということです。

薬はむやみに使うと風邪の治りを遅くするともいわれています。というのも発熱やせき、くしゃみなどの症状は体の防御反応ですから、下げればいい、止めればいいというものではないというのが理由だそうです。

 

風邪薬は、つらい症状を和らげるためというのが一般的な使い方のようです。正しい薬の使用法についてはまずかかりつけのお医者さんに相談するのがいちばんです。

とくに発熱は体にとって有益な防御反応のようで、ウイルスの増殖を抑えてくれたり、免疫機能が高まるといわれています。一方で、発熱には「解熱剤!」と思う人が多いようです。解熱剤を使うと熱が下がるので、「風邪が治った」と思ってしまうらしいのですが、単に熱が一時的に下がっただけで風邪が治ったわけではないということです。

 

ちなみに風邪のウイルスの数は200種類以上、人が風邪をひく回数は1年に3〜6回といわれています。ただし1つのウイルスにはいくつもの型があるらしく、さらに年ごとに形を変えるということなので、ある風邪に免疫ができたとしても、次々に新しいウイルスに感染するということになるわけです。とはいえ一生風邪をひいてもひき切れる数ではありませんね。

 

「たかが風邪、されど風邪」・・病気の中でもっともプピュラーな風邪。風邪をひいたなと思ったら、あなたはどうしますか? 

「卵酒を飲んで寝る?」「部屋をあったかくして休む?」「会社を休む口実ができたと喜ぶ?」「風邪くらいで会社を休むことはできないので無理して出勤する?」

「風邪は万病のもと」ともいいます。くれぐれもお大事に・・

 

 

 <参考URL>

*「テルモ体温研究所〜発熱のメカニズム」(テルモ(株))

http://www.terumo-taion.jp/health/temperature/06.html

 

*「くすりと健康の情報局」(第一三共ヘルスケア(株))

http://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/01_kaze/

 

*「カラダの話〜風邪」(エスエス製薬(株))

http://www.ssp.co.jp/condition/cold/symptom/

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。