「運命の赤い糸」はニオイにあった?!
「この人が好き!」――みなさんは恋に落ちた瞬間を覚えていますか。胸がキューンとして数多くの異性の中から「この人」を選んだ理由は、なんでしたか? 顔が好みのタイプだったから? それともしぐさが素敵だったから? 実は女性が相手を選ぶときにはニオイが大きく関係しているようなのです。
「HLA」遺伝子が「恋愛遺伝子」と呼ばれるワケ
ちょっとむずかしい話になりますが、みなさんはHLA遺伝子というのをご存知でしょうか? 血液には免疫細胞の白血球がありますが、この白血球の血液型として発見されたのがHLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)遺伝子です。HLAはその後の研究で、ほぼすべての細胞にあることがあきらかになっているそうです。
ちなみに赤血球の血液型が、みなさんもご存知のA型、B型、AB型、O型ですが、一般に言われるABO式血液型と違ってHLAの型は数万通りあるとされています。
HLAは、ヒトのからだの中で重要な免疫機構として働いています。ですから、カップルのHLAの型が違えば違うほど、その子どもは、免疫の遺伝型のバリエーションが豊富になり、免疫力が強くなります。免疫力が強まるということは、病気になりにくく、厳しい環境でも生き延びる可能性が高くなる――つまり多くの子孫を残せるというわけです。
女性は、より優秀な子孫を残すために本能的にHLAの遠い人を選ぶといわれています。また、たとえば、不妊治療の体外受精においてもHLAの一致度が高いほうが成功しやすいともいわれていますから、HLAの相性は、妊娠しやすさにも関係しているのかもしれませんね。
ではどうやって、自分と相手のHLAが遠いかどうか判断できるのでしょうか。そのカギを握るのは、体臭です。汗などにはHLAが混じっていて、ヒトはHLAの違いが体臭の違いとなるそうです。
自分と異なる遺伝情報を本能的にかぎ分けていた?
HLAと相性に関してはさまざまな研究があります。中でも有名なものにスイスにあるベルン大学の生物学者ウェデキンド博士らの研究があります。
男性が2日間着た汗のしみ込んだTシャツを箱に入れて、何が入っているかを告げずに、女性たちに、その箱を次々と嗅いでいってもらったのです。そうして、ニオイの好みを採点させました。その結果、「もっとも惹かれたニオイ」のTシャツの持ち主のHLA遺伝子を確認すると、多くの女性が自分のHLA遺伝子と異なる男性のTシャツを選んでいたのだそうです。女性は自分からより遠いHLAを「いいニオイ」として感じるというわけです。
ヒトは「免疫力があり病気になりにくい子ども」をつくれるように、自分とは違う遺伝情報をもつ異性を本能的にかぎ分けて、その人に惹かれていくのですね。嗅覚から実に深い遺伝情報を得ていたと思うと、なんとも神秘的な気持ちがしませんか。
<参考資料>
「一目惚れの科学」(ディスカバー携書:森川友義著)