
肉と魚の「焦げと発がん」はやはり本当か?
いまでは話題にもならないかもしれませんが、かつて「焦げたものを食べるとがんになる」といわれたことがありました。子どもの頃、お母さんからそんなことをいわれた記憶をおもちの方もいるでしょう。焼き魚の王様「サンマ」も旬を迎えようとしている今、あらためて「焦げとがん」の問題について白黒をはっきりさせようかと思います。
再検証「焦げを食べるとがんになる」の真偽は・・?
もはや都市伝説と化したかに見える「焦げとがん」ですが、ふとした折にその記憶がよみがえってくることもあるようです。
たとえばある日の昼食どき、定食で頼んだサバ焼きを前に、「そういえば、昔、焦げたものを食べるとがんになるっていってたなあ・・」などとシミジミ思い出したりします。そして「あれって結局、どうだったっけ?」ということになるのですが、「まっ、いいかっ!」ということで落ち着き、多くの出来事がそうであるように、曖昧なままに放っておかれるというのが大方の流れかと思います。
ところが友人や同僚とおいしく焼肉などを食べているときに、誰かに「焦げを食べるとがんになるんだよね」などと自信ありげにいわれると、びっくりすると同時に、「そういえばあの問題の結論はどうだったっけ?」とちょっぴり不安になり、このまま焼け焦げのついた焼肉を食べ続けていいものか、大いに迷うことでしょう。
・・というわけで、「焦げたものを食べるとがんになるか?」ということをあらためて考えたいと思います。
焦げに確かに含まれる発がん物質。食べると危険な量は?
肉や魚の動物性タンパク質は、焦げるときにヘテロサイクリックアミンという発がん物質をつくり出すといいます。ただ、それがすぐに「食べるとがんになる」量かというとはなはだ疑問なようです。
動物実験の結果を人間にそのまま当てはめることはできませんが、発がん物質であるヘテロサイクリックアミンの摂取量は、人間に換算すると、たとえば体重60kgの人が毎日100トン以上の焼き魚を1年以上食べ続けないと発がんしないというほどの量だそうです。
これはいくらサンマの塩焼きが大好きという人でも食べられる量ではありません。
肉の焦げについても同じで、焼き肉やステーキを毎日食べたからといって、それだけでがんになる心配はなさそうです。
でもご用心・・。
「よしよし、それなら!」ということで、焼き肉屋さんでガツガツ肉を食べて、酒をしこたま飲み、タバコをプラプカ・・などとやるのは本末転倒。
肥満やタバコ、アルコール、塩分、赤身の肉、やけどするほどの熱い食べ物などの摂り過ぎは、発がんの危険要素といわれているからです。
焦げを丼一杯、毎日食べてもがんにはならないようですが、焦げそのものより別のことでがんになったのではシャレになりません。食べ過ぎには注意が必要です。なにごともほどほどが肝要ということで……。
ちなみに野菜や穀物の焦げにも発がん物質が含まれています。アクリルアミドというもので、こちらは焼いたり揚げたり、炒めたりすることで発生するといいます。これらも食べるとすぐにがんになるという危険はないということですので、とりあえずは安心ですが、やはり極端な食べ過ぎには注意したほうがよさそうです。
<参考資料>
*『こんな工夫、あんな知恵 転ばぬ先の玉手箱』(万来舎)
<参考URL>
*「食品に含まれる発がん物質にはどのようなものがありますか」(東京都福祉保険局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/netforum/faq/faq/faq048.html
*「食品中に存在する発がん物質について」(食品安全委員会<季刊紙>)
http://www.fsc.go.jp/sonota/13gou_8.pdf
*「加工食品中のアクリルアミドについて」(食品安全委員会)
http://www.fsc.go.jp/sonota/acrylamide-food170620.pdf