プラスコラム
PLUS COLUMN

塩分のとり過ぎは水の大量補給で防げる?

今や国民病といわれる高血圧。原因が塩分のとり過ぎにあるというのは多くの人が知っています。では、塩分問題を解消するために、水を大量に飲んで塩分濃度を薄め、さらにおしっこの量を増やして塩分を体の外に流してしまう・・。そんな都合のいい解消方法はないのでしょうか。そもそも塩分をとり過ぎるとなぜ高血圧になるのでしょうか? 

 

高血圧のほうが元気でいい?その無関心が命取り!

別名サイレントキラーともいわれる高血圧ですが、そのこわさは意外に知られていないようです。「単に血圧が高いだけなのに、なんでそんなに大騒ぎをしているの?」「低血圧の人より元気でいいんじゃない?」といった印象を抱く人も少なくありません。

高血圧にはこれといったはっきりした自覚症状がありません。痛いとかかゆいとか、出血があるといった、わかりやすい症状があれば病院を受診して治療をしてもらいますが、高血圧にはそういった症状がほとんどないらしいのです。こわい病気の割にあまり関心をもたれないのもそういったことに理由があるのかもしれません。

でも高血圧は放っておくと血管が硬くなったり、狭くなったりする動脈硬化といった血管の老化を招き、その結果、心筋梗塞、脳梗塞など命にかかわる重い病気を引き起こすといわれています。動脈硬化は中高年の人がかかるものと思っている人が多いかもしれませんが、じつは20代、30代でも起こるといわれているのです。
そんなこわい高血圧ですが、塩分のとり過ぎとどう関係しているのでしょうか。
 

水の大量摂取で塩分のとり過ぎを解消できるか?

ポテトチップスやせんべいなどのしょっぱいものを食べたあと、ノドが渇いて水を飲みたくなるといった経験は誰にでもありますよね。もちろんお菓子に限らず、ラーメンや焼肉など塩気の強い食事のあとにも同じようにノドが渇くことはよくあります。
これは体が水を求めているサイン。私たちの体は体液の塩分濃度を一定に保とうとしているのですが、それを超える塩分が体内に入ってくると濃度を薄めようとして水を飲むようにできているのです。

ところが水を大量に飲むと血液(体液)の量が増えます。血液量が増えると血管の壁にかかる圧力が増大して血管を押し広げるので血圧が上がり、これが慢性化すると高血圧になるというのです。さらに取りすぎた塩分は血管に入り込んで血管を収縮させ、血管を狭くして血圧を上昇させる原因にもなるといわれます。

では、おしっこでとり過ぎた塩分を排出できるかというと、どうもそううまくはいかないらしい。そもそも腎臓は進化の過程で塩分を逃がさないようにする仕組みを持ったらしく、塩分を排出するのが苦手のようです。
ですので通常なら汗や尿などで塩分を排出できるのですが、腎臓の能力を超えた塩分が摂取されると排出しきれずに、血液中に取り込んでしまうということのようです。
 

「自分の体は食べたものでできている」

やはり、塩辛いものをたくさん食べたあとに、水をたくさん飲んで塩分を薄めて帳消しにしたり、おしっこをたくさん出して塩分を排出しようとしてもむずかしいようです。
ふだんの食事から塩分のとり過ぎに注意するしかないようです。

あなたの毎日の食事はどうですか? コンビニ弁当やファストフードですますことが多い、ラーメンやソバ、うどんのスープは最後まで飲み干す、ハムやソーセージ、練り物などの加工品をよく食べる、毎日のように酒を飲んでいる、野菜や果物はめったに食べないといった食生活を頻繁に送っているとしたら、すでに高血圧やその他の生活習慣病の予備軍かもしれません。

職場や自治体の健康診断をきちんと受けることはもちろんなのですが、検査結果を見ないでそのまま放ったらかしにしないように。それぞれの検査項目の数値にもっと注意を払いましょう。
「だってまだ若いし、健康だし、どこも悪くない」……自分を過信しないことです。
当然すぎることですが、自分の体は「毎日、自分が食べたものでできている」のです。あなたの体は何でできていますか? もしも自分の体がラーメンでできているなんて、考えただけでかなりシュールだと思いませんか?

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。