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「~せずにはいられない」依存症にご用心

最初はちょっとした楽しみでやっていたことが、いつしか習慣化してやめられない。やめようとすると、そのことが気になって頭から離れなくなる――こ んなことはありませんか? スマホが手放せない、スイーツがやめられない、ネットオークションにはまってしまった――今回はだれもが陥りやすい身近な依存 症のお話です。

 

アルコールや薬物だけじゃない。身近なこんな依存症

依存症というと、すぐに思い浮かぶのがアルコール依存症や覚せい剤や危険ドラックなどの薬物依存症かもしれません。
ほとんどの人は、そんな病気は自分とは無関係だと思っているでしょうが、じつはとても身近な病気。あらゆるものが依存の対象になる可能性があります。知らず知らずのうちに依存症になってしまったといったことが少なくありません。
 

たとえば、ネトゲ依存(ネットゲーム依存)やスマホ依存、パチンコなどのギャンブル依存、買い物依存、ニコチン(タバコ)依存、ドリンク剤依存、ス イーツ依存……。ほかにも、占いにどっぷりハマってしまう人や、いつも恋人がいないと不安でたまらなくなって恋人を次々替える恋愛依存になる人もいます。
依存症になる人は意思が弱いといったイメージがつきまといますが、ストレス社会の現代では、だれでもかかりうる可能性のある病気なのです。
 

神経伝達物質「ドーパミン」がもたらす「快感」

最初はストレス解消のつもりで軽い気持ちではじめていたものが、やがてそれがなくなると「いてもたっていられない状態」になって、健康に害を及ぼしたり、仕事が手につかないなど社会生活に支障をきたすのが依存症です。

こうした依存症の背景には、ドーパミンという物質が関係しているといわれています。ちょっとむずかしくなりますが、そもそも私たちの脳の中には気持ちのよさや快感を覚えるしくみがあって「脳内報酬系」と呼ばれています。
 

その脳の報酬系に深くかかわっているのが、ドーパミンという神経伝達物質。脳内報酬系が刺激されてドーパミンが放出されると、快感を覚え、それが条件付けのようになって、やめられなくなってしまうのです。
「やめたいのに、やめられない」――依存症の背景にはこんなしくみがあったのです。
 

抜け出すためにはドーパミンの暴走を抑えてくれる「セロトニン」がカギ

快楽を感じる源となるドーパミンですが、ドーパミンは一方で向上心やモチベーションなど物事に対する意欲をかきたてる神経伝達物質でもあります。生 きていくうえで必要不可欠のドーパミンは、少なすぎれば無気力になり、多すぎれば依存症や妄想、幻聴幻覚などを引き起こすといわれています。適度なバラン スが不可欠なのです。
 

そのドーパミンを制御してくれる神経伝達物質があります。それがセロトニンです。セロトニンは心を安定させる働きがあり、セロトニンが不足すると、依存症だけでなく、うつ病や精神疾患にもなりやすいといわれています。

依存症とまではいかない依存的傾向から抜け出して心の健康を保つためには、このセロトニンを増やすことがポイントのようです。といってもそんなにむずかしいものではありません。

セロトニンは、朝日を浴びる、質のいい睡眠をとるなど、ちょっとした日常の努力で増やすことができます。(具体的なセロトニン活性術は、当コラムVol.15『うつうつ脳をぶっ飛ばせ! 幸せホルモン「セロトニン」の活性術』を参考にしてください)
最近、ちょっと依存傾向があるかも……と感じている人は、セロトニン活性術をぜひ試してみてください。
 

それでも、なかなかやめるのが難しい、ひとりで依存から抜け出せないと感じたときは、早めに精神科などの心の専門家に相談することをおすすめしま す。精神科は敷居が高いと感じる人は、まずは各地方自治体で行っている「こころの相談」を利用したり、精神保健福祉センターや保健所などの相談窓口を利用 するとよいでしょう。

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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