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泣けば泣くほど、ストレス解消?涙に隠された思わぬ効用に注目!

あなたは最近、涙を流しましたか?悲しいとき、うれしいとき、悔しいとき、そして過去のつらいできごとを思い出したとき・・さまざまなシーン でいろいろな涙が流されます。こうした感情による涙は、他の動物には見られない人間特有の現象といわれています。わたしたちはどんなときに涙を流すので しょう。何のために涙を流すのでしょうか。今回は、涙の役割と感情との関係について考えてみました。  

 

涙を流すことでカタルシス効果がある?

涙は、なぜ流れるのでしょうか? 理由は3つあるといわれます。1つ目は、目の表面を保護したり栄養補給のためといった基礎的な分泌、2つ目は、ゴ ミや煙が目に入ったときとかタマネギを切ったときなどの反射的な分泌、3番目は、喜怒哀楽など感情の起伏によって分泌される情動的な涙です。
涙な んてどれも同じだろうと、ふだんはあまり気にも留めない涙ですが、タマネギを切ったときに出る涙と、映画を見て泣いたときの涙では成分に違いがあるといい ます。映画を見て出た涙には高濃度のタンパク質が含まれていたということがわかったのです(1985年アメリカの生化学者ウイリアム・フレイ博士の調査に よる)。
 

つまり、映画やドラマを見たり、本を読んだり、失恋したり、感動したりしたときに出る涙は、タマネギを切ったりあくびをしたときに出る涙とは違い、 何らかのカタルシス(心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、 気持ちが浄化されること=三省堂ワードワイズ・ウェブより)効果があると考えられたのです。
こうした涙には、ストレスとの関連が深いホルモンのプロラクチンや副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、コルチゾールが含まれていることもわかりました。
 

感情によって流された涙には精神的なストレスを解消する働きがあるというわけです。
ということは、「泣けばすっきりする」とか「泣いてすべてを忘れる」などといわれることもありますが、あながちウソではないようです。
 

悲しい涙には「幸福ホルモン」が詰まっている?

また、泣いたあとにはエンドルフィンという「幸福ホルモン」が分泌されることがわかってきました。この神経伝達物質は別名、脳内モルヒネ、脳内麻薬とも呼ばれ、モルヒネの数倍もの強い鎮静作用をもつ物質として知られています。 
このようにエンドルフィンというホルモンには、脳を活性化し、精神的なストレスの解消に効果があり、免疫細胞の働きを強める作用があります。そして泣いた本人に幸せな気持ちをもたらすとも考えられています。
 

悲しいときやくやしいときは、遠慮せずに思いっきり泣きましょう。涙を流すことで体内の毒であるストレス物質が排出され、心がスッキリとして免疫力 も高まるのです。泣くのをがまんするのは毒をため込むのと同じです。ただし、うそ泣きをしても意味がありません。逆にストレスが増えるといわれています。 当然、タマネギを切って涙を流したとしてもストレスが解消されるわけではありません。
 

ところで、わたしたちは「悲しいから泣く」のでしょうか、それとも「泣くから悲しい」のでしょうか。多くの人は「悲しいから泣く」と答えるでしょ う。でも最近の研究では「泣くから悲しい」という説が支持されています。同じように、「楽しいから笑う」のではなくて「笑うから楽しい」という説が有力に なってきています。感情の動きが先に働き、そのあとに生理的現象をうながすということなのでしょうか。
 

ちなみに涙は血液を原料にして涙腺でつくられます。成分の98%は水で、残り2%はタンパク質やナトリウム、リン酸塩などです。
涙がしょっ ぱく感じるときがありませんか? 感動の涙や悲嘆の涙ではなく、悔しいときの涙だそうです。悔しさや怒りを感じているときは交感神経が刺激されて涙はナト リウムを多く含み、「しょっぱく」なるというのです。悲しいときやうれしいときの涙は、「水っぽくて甘い」のだそうです。 あなたの今日の涙はどんな味が するでしょうか……?
 

 

<参考URL>
・養命酒製造株式会社HP 「月刊 元気通信」(2013年3月号)
http://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/feature/130226/

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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