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「自己中」より「利他中」が結果的には自分のため?利他的行動が「運」も「免疫」もアップ!

自分のことよりも他人の利益を考えて行動する人のほうが幸運をつかむ確率が高いという研究があります。つまり利他的な行動をどれだけとれるか によって、その人の運は左右されるということらしいのですが、本当でしょうか。さらに利他的な行動をすることによって体の免疫力が上がるということもいわ れています。ちなみにあなたは利他的行動派? それとも利己的行動派?  

利他的な行動によって運が上昇する?

あなたの周りにも運のいい人、悪い人、いませんか? 仕事でもプライベートでも「ついている」人……たとえば次々と斬新なアイデアや企画を生み出し て、周りを楽しませたり友人関係を広げたり、会社の業績をアップさせて上司や同僚からの信頼を不動のものにしていくといったような、うらやましいほどの幸 運の持ち主。逆に、何をしてもうまくいかず、トラブル続きという運の悪い人もいます。
 

京都大学の藤井聡教授は「認知的焦点化理論」というものを唱えています。つまり「心の奥底で何に焦点を当てているか、どのくらい他人のことを配慮できるかという観点から人を分類する」という研究です。
 

それによると「人に配慮できる人は運がよい」ということだそうです。藤井教授によると、自分から遠い存在である他人のことまで思いやる、あるいは遠 い将来のことまで配慮する人、つまりは利他的な人ほど得をし、逆に自分の損得のみに心の焦点を合わせている人、つまり利己的な人は損をするというのです。
 

藤井教授はその理由として、(1)互恵不能原理、(2)暴露原理、(3)集団淘汰原理の3つをあげています。
(1)は、「お互いさま」の関係で成り立ってい る人間社会では、利己的行動をとる人は「嫌なヤツ」として敬遠され、結果として損をするというものです。(2)は、人間は進化の過程で「悪いものを見破る能 力」を発達させてきたので、利己主義者がいい人の仮面をかぶっても敏感に見破られてしまうというもの。(3)は、利己的な人が支配する社会は、相手を利用しよ う、だまそうという関係なので、継続的な協力関係は築かれず、結局その社会自体が破滅してしまうというものです。
 

こうして、他人のことを配慮できる利他性の高い人のもとには自然と人が多く集まり、互恵の関係が築かれ、仕事でもプライベートでもさまざまな相乗効果をもたらし、運が上昇するというわけです。
 

利他性行動は免疫をアップさせる?

自分のことよりも他人のことを優先して行動するという利他性行動は、運をアップさせること以外にも、体の免疫機能をアップさせるといわれています。
自然科学研究機構の定藤規弘教授(生理学研究所)らの研究によると、利他的な行動をとると脳の報酬系の神経回路が刺激を受けるといいます。
 

人の脳は、ほめられたり、好意的な評価を受けると喜びを感じます。それによってドーパミンやセロトニンといった脳内物質が分泌されるのです。これらは脳がうれしいと感じたり、気持ちがいいときに分泌されるものです。
こうして脳の報酬系が刺激されると、ナチュラルキラー細胞が活発になり、体の免疫機能がアップするということもいわれています。さらに利他性行動をとる人の場合、ウイルス抗体値が高く、風邪などの感染症にもかかりにくいという研究もあります。
 

また脳には、だれかからほめられなくても自分の行動を「よくやった」「がんばった」などと自己評価する部位があり、それによっても快感が得られます。何かをしてあげた相手から感謝されたときも同じように脳は喜びを感じます。
利他的行動によって、運は向上! さらに脳は喜びを感じて、報酬系の回路が刺激され、免疫やウイルス抗体値がアップ、病気に強い体になる……人のために働くことは多くの褒美をその人に与えてくれるものらしいです。
 

ただ、「人のために」といっても、実際となると「なかなか」というのが本音かも。「一日一善」という言葉があります。電車の中で高齢者に席をゆずる、募金をする、階段で高齢者の荷物を持ってあげるなど、他人への小さなことからはじめたらどうでしょう。

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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