プリン体ゼロのビール系飲料で痛風は予防できる?
尿酸値が気になる人にとって、痛風は他人事ではありません。「痛風が心配だからビールは控えよう」と考えて、「プリン体ゼロ」のビール系飲料を選ぶ人も多いでしょう。でも本当に「プリン体ゼロ」の飲料で痛風を予防できるのでしょうか?
「プリン体ゼロ」のビール系飲料でも安心はできない
「ビールは痛風になる危険度が高い」という話はよく聞かれることですが、実際は、食べ物に含まれるプリン体に比べると、ビールのプリン体はとても少ないといったことは以前のコラムで紹介しました。
では、「プリン体ゼロ」のビール系飲料には、痛風を防ぐ効果があるのでしょうか?
たしかにこれらに含まれるプリン体はわずか(0.1mg/100㎖)なのですが、ビールをやめてそれだけ飲んでいれば痛風が防げるということにはならないでしょう。
プリン体はほとんどすべての食べ物に含まれています。さらにアルコールやエタノールが尿酸値の上昇にかかわっていることを考えれば、プリン体ゼロといえども、痛風と無縁でいられるのはむずかしいといえます。
酒の肴としてプリン体がとくに多い鶏レバー(312.2mg)や豚レバー(284.8mg)、カツオ(211.4mg)などを毎日食べていれば尿酸値が上昇し、痛風になる危険も高まると思われます(数値はいずれも100g当たり)。やっかいなのはプリン体は「うまみ成分」でもあるので、おいしいと感じる食べ物に多く含まれていること。魚介類や肉類、干物や白子といった食品は食べ過ぎに要注意です。
なので、プリン体ゼロのビール系飲料を飲んでいれば「痛風を防げる」といった話は、まったく根拠のないものと考えたほうがよさそうです。私たちが勝手にそのように「勘違い」していただけなのかもしれません。
プリン体の摂取を控えたいと思うなら、焼き鳥を1本減らす、カツオの刺身を食べ過ぎないなど、酒のつまみを再考するのがよさそうです。もちろん節酒も大切です。
プリン体は「うまいもの」に多く含まれる。要注意
痛風は夏に多いといわれます。ビールなどのアルコールを大量に飲む機会が増えることに加えて、汗を大量にかいて血液が濃くなることがその理由と考えられています。
痛風や高尿酸血症を防ぐには、ふだんの食生活と適度な運動が大切です。たとえば、
(1)プリン体の多い魚類や干物、肉類を食べ過ぎない
(2)プリン体が少ない野菜や海藻、キノコなどを積極的に食べる。他にもかまぼこや焼きちくわ、魚肉ソーセージなどの練り物、ヒジキ、ワカメなどの海草類、牛乳、豆腐などはプリン体が少ないといわれます。
(3)十分に水を飲み(1日2〜2.5ℓ)尿酸を排出させる
(4)酒は適量(1日当たり/ビール500㎖、日本酒1合、ウィスキー60㎖、焼酎70㎖)を守る
(5)ウォーキングなどの有酸素運動などがおすすめ
といわれています。
ちなみに痛風が「風が吹いても痛い」のは、針のような形の尿酸ナトリウムの結晶が関節にたまり、それを白血球が攻撃することで炎症が起こるからといわれます。尿酸ナトリウムのトゲトゲした結晶が関節をチクチクと刺激しているわけではなかったのです。
また、女性は女性ホルモンの影響で尿酸値が低く、痛風は少ないといわれます。そのため、「痛風は男の病気。自分とは無関係」と思いがちですが、閉経後は尿酸値が高まる傾向があるようで、ご用心。食事と運動に注意しましょう。
*参考資料:公益財団法人 痛風財団「食品・飲料中のプリン体含有量」(提供 金子希代子 帝京大学薬学部物理化学講座薬品分析学教室・教授)、日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風のガイドライン」2002より