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「ビールを飲むと痛風になる」は本当?

アルコールと尿酸値の関係は意外に深い


俗に「風が吹いても痛い」といわれる痛風。かつては「ぜいたく病」とか「帝王病」などといわれたりもしました。この痛風の原因となるのは尿酸という物質で、プリン体が体内で分解される過程で生まれます。尿酸は通常、尿や便として体外に排出されるのですが、排出能力を超えて体内に蓄積されると、たまった尿酸が関節の中で結晶化して、激しい痛みを伴う痛風発作が起こるのです。
そんな痛風の原因によくビールがあげられますが、本当でしょうか? 
 

痛風の元凶・プリン体はほとんどの食品に含まれている

「ビールを飲むと痛風になる」……そんな言葉をよく耳にしますよね。でも意外にもビールに含まれるプリン体はそんなに多くはありません。他の食べ物に比べてもごくわずかです。  
 たとえば、ビール100㎖当たりのプリン体(4.4〜6.9mg)は、白米(25.9mg)や納豆(113.9mg)、鶏レバー(312.2mg)などと比べると、数分の1から数十分の一に過ぎません。プリン体は、牛乳や鶏の卵など一部の食品を除いてほとんどの食べ物や飲み物に含まれていますから、私たちは毎日、何かを食べている以上、プリン体は体の中に入ってくるわけです。
 

では、どうしてビールのプリン体が痛風の元凶としてやり玉にあげられるのでしょうか。実は「ビールはプリン体が多い」のではなく、ビールは「アルコール類の中では」プリン体が多いということが、ビール=痛風とされる理由かもしれません。
実際、ビール以外のアルコール飲料のうち、焼酎はプリン体がゼロ、日本酒は1.2mg/100㎖、ワインは0.4mg/100㎖程度です。アルコールのプリン体は食べ物と比べても意外に低い数値です。「へえ」と思う人が多いかもしれませんね。
 

しかし、ビールと痛風の結びつきについて、もっと大事なこと、ぜひ知っておきたいことがあります。それはビールに限らずアルコールには尿酸値を上昇させるなど、痛風を引き起こす作用があるということです。
 

ビールだけが悪者といえるのか?

尿酸値は、たとえばビール大瓶1本(633㎖)を飲むことで平均1mg上昇するといわれています。またアルコール類に含まれるエタノールは、尿酸をたくさん作り出し、あわせて尿酸の排泄能力を低下させるといいます。
アルコールを毎日大量に飲んでいれば、痛風になる確率は上昇するでしょう。とくにビールはアルコール類の中でプリン体が多く含まれています。そのことが実際の数値以上に「痛風・プリン体」と結びつけられてしまうのかもしれません。
 

「酒は百薬の長」ですが、適量を過ぎれば「百害」のもとにもなります。

さらに、ビールと相性のいい食べ物はといえば、焼肉、焼き鳥、ホルモン焼きをはじめ、唐揚げ、ポテトフライなど、いずれも高エネルギー、高脂肪が特徴です。毎日の大量の飲酒は、痛風はもちろん、肥満や高血圧、糖尿病といった他の生活習慣病を引き起こす原因にもなります。
 

痛風はかつて中高年の病気といわれました。最近では20〜30代での発症が増えているようです。生活習慣の変化がその背景にあるといわれています。
では、プリン体ゼロのビール系飲料は痛風予防に効果があるのか、そしてプリン体はどんな食べ物にどのくらい含まれているのか、痛風を防ぐ生活習慣とはどんなものか、それについては次回以降でご紹介します。


 

*参考資料:公益財団法人 痛風財団「食品・飲料中のプリン体含有量」(提供 金子希代子 帝京大学薬学部物理化学講座薬品分析学教室・教授)より

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。