酸性食品から歯の健康を守るには、口の中を中性に保つこと
私たちの口の中はふだん中性(pH7.0)に保たれています。体の中でいちばん硬いといわれる歯のエナメル質が溶け出すのはpH5.5より低いとき だといわれています。pHは数値が低いほど酸性度が高いことを示していて、前回お話したしたお酢系飲料の中でも黒酢ドリンクはpH3.1くらいです。健康 のためにお酢系飲料を飲むのはおおいに結構なのですが、要は飲み方です。飲んだらお茶や水で口の中をすすいで、酸性の口の中を中性にすることが歯の健康を 守るためにも大切なのです。
ふだん飲む飲料水にも酸性度の高い飲み物がいっぱい
お酢系飲料の他にも、たとえばコーラはpH2.2、スポーツ飲料はpH3.8、赤ワインはpH3.4、梅酒はpH2.8などです(詳しくは別表を 参照してください)。もちろん商品によってpH値に違いがありますが、似たような商品についてはそれほどの大きな数値の差はないと思われます。
また果物や調味料にも注意が必要です。レモンはpH2.1、ポン酢はpH3.8、レモン系ドレッシングはpH3.1くらいです。ちなみに何でも溶かすといわれる胃酸はpH1.0〜1.5、胃の中はpH2.0といわれています。
ただ、これらの飲食物を全面的に避ける必要はありません。たまに飲んだり食べたりするくらいでは問題ありませんし、食べた後に口の中を水やお茶ですすぐなどで、防ぐことができるといわれています。
酸蝕を防ぐためのちょっとした生活の工夫
コーラやスポーツ飲料など、どれも一般によく飲まれている馴染みの飲み物です。こうした酸性度の高い飲料水を飲むときはどんなことに注意したらいいでしょう。
- まず、運動した後など口の中がカラカラに渇いているときは、スポーツ飲料を頻繁に飲むのは避けた方が無難です。スポーツ飲料にはたくさんの糖分が含まれているのも気になります。熱中症予防にはミネラルが豊富な麦茶がよいといわれます。
- ドライマウスの傾向がある人は、できるだけ酸性の飲み物や食べ物は避けたほうがよいといわれています。
- 酸性度の高いものを口にした後は、お茶や水で口の中をすすぐことで、酸性に傾いた口の中を中和することができます。健康のために毎日お酢系飲料を飲んでいる人にはとくにおすすめです。口の中をすすぐのが面倒だけど、健康のためにお酢系飲料やビタミンCは毎日摂りたいという人はカプセル入りのサプリメントがいいでしょう。
- 何かをしながらの「ながら飲み」には麦茶やお茶、水がおすすめ。どうしても炭酸飲料が飲みたいときは、水と交互に飲むのがいいでしょう。
- 酎ハイやワインなどを飲むときは、口の中に広げずにごくりと飲むのがいいようです。また、酒だけ飲まずに食べ物をしっかりかむと、唾液の力で口の中を中和できます。酒と水を交互に飲むのもいいでしょう。二日酔いも防げます。
- 酸っぱいものを食べたり飲んだりした後の歯みがきは30分は間をおくのがよいといわれています。
……健康によいということでコンビニやスーパーの棚にずらりと並ぶお酢系飲料ですが、飲み方次第では歯の健康を損なうという「諸刃の剣」であることを心得たいもの。ただ酸性のものはすべて悪と決めつけず、飲み方や食べ方のちょっとした工夫で食事を楽しみましょう。
酸主な飲食物のpH値
歯のエナメル質が溶け始めるのはpH5.5といわれます。数値が低くなるほど酸性が強いことを示しています。
*参考資料:『歯が溶ける!? 酸蝕歯って知っていますか?』(クインテッセンス出版:田上順次監修、北迫勇一著)