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スマホを置いて、森に出かけよう!

「疲れがとれない」「気分が落ち込んで……」などといったことありませんか? そんなときは森の中を歩いてみてはどうでしょう。

「森林浴」は心と体にさまざまな好ましい効果をもたらしてくれるといいます。

 

日本は世界有数の森林大国

 あまりに身近すぎて、その価値に気づかないことってよくあります。

「森林」もその1つかもしれません。

明治期までに日本を訪れた欧米の人々は、日本の豊かで美しい自然に驚いて「このまま世界の公園にしてしまったらどうか」というものまで現れたといいます。また、彼らの母国の自然環境の厳しさと日本の豊かな自然のあまりの違いに、「神は不公平だ」といって嘆いたとも伝えられています。

 各地の都市化が進んだいまでも、日本は世界有数の森林大国として知られています。国土のなんと68.3%を森林が占めているといいます。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも、森の国として有名なフィンランド、スウェーデンといった北欧の国に次いで堂々の第3位です。

 そんな森林大国から生まれた「森林浴」という言葉が「Shinrin-yoku」として、その健康への効果とともに海外でも注目されているそうです。

 

森の中の「いい香り」の理由は?

森を目的もなくただ歩いたり、木の切り株に腰をおろし、ぼんやりと森の中に身を置くだけで、不思議と心が安らいだり、清々しい気持ちや爽快感が得られます。

「森林浴」という言葉が生まれる以前から、私たちは経験的に森が安らぎや癒しの効果を持つ空間であることを知っていたのかもしれません。

 森に入ると、ひんやりとした森の独特の空気とともに、爽やかな「いい香り」に包まれます。「フィトンチッド」と呼ばれる揮発性の芳香物質(主にテルペン類)です。

「フィトンチッド」はヒノキやスギ、マツなどの針葉樹に多く含まれ、樹木が傷つくと病原菌の感染などから、樹木が我が身を守るために放出される抗菌作用が強い物質で、空気を浄化する作用もあるとされます。

森には樹木が発散するこの「フィトンチッド」が満ちています。

 

「森の空気」は免疫やストレスに効果あり?

「森の空気」ともいえる「フィトンチッド」を吸い込むとNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化したり、ストレスが緩和されたりするといいます。

 NK細胞というのはウイルスや細菌に感染した細胞、がん細胞などを攻撃する働きをもつリンパ球の一種。この細胞が活発になることで免疫力が高まり、かぜなどの病気にかかりにくくなるといわれます。

 このNK細胞の働きの度合いを示す「NK活性」の値が森林浴前と比べて1日で27%、2日で53%も上昇したといった研究もあります(環境省「データで見る 国立公園の健康効果とは?」より)。

また、森の香りをかぐことで交感神経の働きが抑えられ、リラックス状態を示す副交感神経の活性が高まるともいいます。木の匂いの成分の働きで副交感神経の活動が約50%上昇したという報告もあります。

さらにストレスホルモンであるコルチゾール濃度が、都市にいるときと比べて13%減少したともいいます(林野庁Webサイト)。血圧と心拍数の低下も見られるようです。

 

森に入ると五感が刺激される

森の中は木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりや川のせせらぎ、樹々が風にそよぐ音などが耳に心地よく響きます。ふかふかに積み重なった落ち葉が足裏をやさしく包みます。

 こうした自然の光や音、樹木が放つ匂いなど、森には視覚、嗅覚、聴覚、触覚などの五感を刺激する要素がいっぱい詰まっています。

 セロトニンは「幸せホルモン」と呼ばれる脳内伝達物質ですが、いい香りや美しい景色、おいしいものを食べるなど、五感を心地よく刺激することで分泌につながるといいます。

森に入ると緊張や不安、抑うつ、落ち込み、怒り、敵意、疲労、混乱など、否定的な感情が低下し、喜びの感情が高まるという研究もあります。

森林浴による健康効果は、ただぼんやりと森の中に身を置くだけのお手軽な森林浴でも実感できるといわれます。スマホやパソコンにベッタリの日常に「疲れた」と感じたときの習慣にしてみてはいかがでしょう。

 ただ、森に入るときには、ダニやハチ、ブヨの他、クマなどの危険な野生動物には十分な注意が必要です。

 

<参考>

*「データで見る 国立公園の健康効果とは?」(環境省)

*「森林の有する多面的機能について」「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査報告書(要旨)」(林野庁)

*「1900年までに日本に来訪した西洋人の風景評価に関する記述」(国立環境研究所研究報告 第185号/独立行政法人国立環境研究所)

*「森林浴」(東京新聞/2016.5.3)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。