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和食と欧米型の食事、死亡リスクが低いのは?

和食は「ヘルシー」で欧米型の食事は「健康に悪い」といったイメージをもつ人が多いかもしれません。

それが近年、欧米型の食事でも死亡リスクが低減するという研究結果も……。

いったいどういうことなのでしょう?

 

健康的な和食のイメージは「一汁三菜」?

 日本の伝統的な食事といえば、多くの人が連想するのは「一汁三菜」でしょうか。ご飯を主食にして、みそ汁、主菜に焼き魚(煮魚)、副菜は煮物と漬物という組み合わせの食事のスタイルは、基本的な日本の食習慣、食文化として長く引き継がれてきました。

「一汁三菜」は栄養的にも理想的な食事パターンともいわれています。そんな日本食と死亡リスクを調べた研究があります。

国立がん研究センターなどの研究グループが19年間にわたって行った多目的コホート研究で、日本食パターンが高いグループでは、循環器疾患や心疾患による死亡、および全死亡(事故や特定の疾患にかかわらず、あらゆる原因による死亡)のリスクが低かったことが明らかになりました。

 

「日本食パターン」の食事は死亡率を下げる?

この研究で定義する「日本食パターン」というのは、ごはん、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶の摂取が多く、牛肉、豚肉の摂取が少ない食事パターンです。

これらの「日本食パターン」を摂取量の少ない群から多い群の4つのグループに分類して、45~74歳の男女9万人を対象に19年間の追跡期間中に発生した死亡(循環器疾患、心疾患、脳血管疾患、がん及び全死亡)との関連を調査。

「日本食パターン」の度合いが高いグループは低いグループに比べて、全死亡のリスクは14%、循環器疾患死亡と心疾患死亡のリスクはそれぞれ11%、低いことが示されました。

さらに「日本食パターン」の各食品の摂取量を「多い」「少ない」の2つのグループに分けて、それぞれの死亡リスクを比較したところ、摂取量の多いグループで、海草6%、漬物5%、緑黄色野菜6%、魚介類3%、緑茶で11%、それぞれ死亡率が低いことが分かったといいます。

 

日本食の塩分過多の懸念にカリウムが有効?

「日本食パターン」の食事が、なぜ死亡リスクを低下させるのでしょう?

 その理由として研究グループは、「海草や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶に含まれる、食物繊維、カテキンやポリフェノールなどの抗酸化物質、カロテン、不飽和脂肪酸などの健康に有益な栄養素の摂取量が多いことが考えられる」としています。

 食品単体としては死亡リスク低下への影響は小さいものの、「日本食パターン」として食品をバランスよく組み合わせて食べることによって、さまざまな栄養素が作用し、死亡リスクが低下した可能性を指摘しています。

 ただ、日本食は塩分が多いのが懸念。今回の調査でも「日本食パターン」の度合いが高いグループほど食塩の摂取量が多いという結果でしたが、同時にカリウム摂取量も多かったそうです。

カリウムはナトリウム(食塩)を体外に排出し、塩分の摂取過多による血圧上昇を抑える作用があります。

つまり、「日本食パターン」は塩分摂取が多いけれどもカリウムも多く摂取できるので、食塩過多の懸念は打ち消された可能性があるのだそうです。

 

「欧米型」の食事でも死亡リスクが低い?

 一方、こんな研究もあります。国立がん研究センターと国立国際医療研究センターとの共同で行われた多目的コホート研究で、食事の内容を「健康型」「欧米型」「伝統型」の3つに分類して、心疾患や脳血管疾患、循環器疾患などによる死亡リスクとの関連を調べたもので、40~69歳の男女、約8万人を約15年間追跡調査しました。

「健康型食事」とは、脂の多い魚、野菜、豆類、キノコ、海草、緑茶などの内容。「欧米型食事」は肉類、パン、乳製品、果物、コーヒー、ジュースなど。「伝統型食事」はごはんにみそ汁、漬物、魚介類、果物などです。

 この食事パターンで、多く摂取する人と少ない人との死亡リスクを比較したところ、健康に良くないとされる「欧米型」で全死亡が9%、心疾患死亡が12%、脳血管疾患死亡が12%、それぞれ低いことが分かりました。

「健康型」では全死亡が18%、心疾患死亡が25%、脳血管死亡が37%、それぞれ低い結果でした。「伝統型」は関連がみられなかったそうです。

 

「和」か「洋」かにこだわらず食材は豊富に 

「欧米型」食事が「健康型」食事ほどではないものの、なぜ、死亡リスクが低い結果になったのでしょう?

 研究報告では、「日本人は欧米人に比べて肉類の摂取量が少ないことや、

コーヒーや牛乳、乳製品などの好ましい効果」があるとしています。

塩分が少ない「欧米型」の食事の傾向が作用している可能性も考えられます。

 とはいえ「健康型」「欧米型」など、食事のタイプにこだわることなく、肉や魚、さまざまな野菜にキノコ、海草、乳製品に果物など、「まんべんなくたくさんの食材を食べる」のが健康の秘訣と古くからいわれています。

「一汁三菜」を基本にしつつ、緑茶や牛乳のほか、チーズや果物などを加え、副菜の多い「多菜」の食生活を意識してみてはいかがでしょうか?

 

<参考>

*「『日本食パターン』で健康的に過ごそう!」(農林水産省)

*「日本食パターンと死亡リスクの関連について」(国立がん研究センター/多目的コホート研究)

*「食事パターンと死亡リスクとの関連について」(国立がん研究センター・国立国際医療研究センター/多目的コホート研究)

*「なぜ“欧米型の食事”で死亡リスク減少か?」(日テレNEWS NNN/2017.6.1)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。