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命にかかわる「モーニングサージ」に要注意!

寒い朝、布団から起き上がるときに注意したいのが「モーニングサージ」。

起床後に血圧が急上昇する症状のことですが、心臓や脳に重大な疾患を引き起こす可能性があるといいます。どう対処すればいいのでしょうか?

 

高血圧は死亡原因に大きく影響

高血圧が心疾患や脳血管疾患といった生活習慣病のリスクであることは多くの人が知っています。

「サイレントキラー(静かな暗殺者)」との別称をもつ高血圧は、喫煙と並んで生活習慣病による日本人の死亡に、もっとも大きく影響する要因ともいわれています。

「人口動態統計(2024年)」によれば、心疾患と脳血管疾患は、常に日本人の死因の上位にあげられています。

もし「高血圧が完全に予防できれば年間10万人以上が死亡しないですむ」(e-ヘルスネット・厚生労働省)と推計されている高血圧ですが、いまでも20歳以上の日本人の2人に1人は高血圧といわれています。「国民病」ともいわれる所以でしょう。

 

朝の血圧の急上昇は命の危険!

寒い時期に特に気をつけたい高血圧ですが、なかでも「モーニングサージ」のリスクには要注意です。ご存知の方もいるでしょうが、モーニングサージとは、夜に低下した血圧が、朝、目覚める前後に生じる血圧の急上昇のことです。早朝高血圧の一種といいます。

血圧は、健康な人でも1日のうちでゆるやかに上がったり下がったりする日内変動があるといいます。

夜、寝る前や睡眠中は低くなり、朝になると徐々に上がってくるのが普通といわれますが、モーニングサージは朝、起床の前後に急激に血圧が上がるのが特徴だそうです。

モーニングサージのリスクとして脳血管疾患や心疾患がよく指摘されます。例えば、日中の血圧は正常な人でも、朝、血圧が高くなるモーニングサージを起こすと、脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクは、そうでない人に比べて2倍以上といわれています。

 

モーニングサージは本人も気づかない?

モーニングサージが厄介なのは、医療機関や健康診断で血圧が正常と判断された人でも起こる可能性があることだといいます。

本人も気づかない朝の急激な血圧の変動こそ、モーニングサージの真の怖さといえるかもしれません。

 モーニングサージが起こる主な原因として、起床時に交感神経が優位になり血管を収縮させる、寒い場所へ移動することによる血圧の上昇、睡眠時無呼吸症候群、睡眠不足やストレスなどが考えられるといいます。

 脳血管疾患や心疾患は、朝もしくは午前中に多く発生していることが知られています。また、モーニングサージの発生は月曜日が多く、日曜日のおよそ2倍ともいわれています。

とくに寒い季節の月曜日の朝は要注意といいます。脳血管疾患や心疾患のリスクが高い確率でひそんでいると考えられています。

 

モーニングサージを知るには、どうする?

 自分の血圧を把握できていますか? 医療機関や健診でモーニングサージのリスクを発見できないのであれば、自分の血圧は自分でコントロールするのが予防のポイントになりそうです。

 血圧を、できれば毎日、自宅で測る習慣をつけるのが推奨されています。忙しい人は週に数回でもいいようです。朝と夜の1日2回が原則です。 

朝、測るときは起床後1時間以内に。トイレを済ませ、食事をする前に測ります。夜の測定は気持ちが安定する就寝前がいいようです。運動した後や入浴した後、飲酒の直後は避けるのがいいとされます。

一度に測る回数は、朝と夜の測定時にそれぞれ2回測るのが一般的といいます。

なかには数値が高いのが気になるからと何回も測り直すケースもあるようですが、正確性などの心配もあり、お勧めできないといいます。

 

朝の寒暖差による血圧の変動にも注意

 血圧は常に安定しているわけではなく、寒さやストレス、運動や食事などによって変動します。気温の急激な変化や強いストレスを感じたときにも血圧は変化します。

とくに寒い朝のゴミ出しや郵便受けを見に行ったりするときの薄着には要注意。ちょっとの間でも外に出るときは上着を羽織ることを忘れずに。入浴の際の浴室内外の寒暖差にも気配りを。

さらに温泉施設の露天風呂での「雪見風呂」は危険。血圧の乱高下による事故につながりかねません。

 また、朝、ガバッ! といきなり起きずに布団の中で手足を動かしたりして、ダラダラと時間を過ごすのも体を温める方法として有効なようです。

 冬の朝寝坊とダラダラ寝は、もしかして健康維持の秘訣だったりして?

 

<参考>

*「早朝高血圧からパーフェクトな24時間の血圧管理へ」(公益財団法人 日本心臓財団)

*「モーニングサージ」(公益社団法人 日本薬学会)

*「冬の高血圧、モーニングサージにご注意」(オムロン ヘルスケア株式会社)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。