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冬は更年期症状がつらくなる!?

寒さが身に染みる季節になりました。

晩秋ころから冬にかけて更年期の症状が強くなったと感じることはありませんか? 

 

冬は、なぜ更年期症状が強くなる?

 寒い季節なのに、突然顔がほてってどっと汗が噴き出る「ホットフラッシュ」や上半身は冷えを感じていないのに手足が冷たくなる「冷えのぼせ」、ほかにも頭痛や肩こりが悪化したり、憂うつ気分がひどくなったり……冬になって更年期症状が強くなったと感じる人が少なくないようです。

 その大きな理由は、気温の変化による自律神経の乱れだといわれています。

 そもそも更年期は、女性ホルモンの分泌量がゆらぎながら急激に低下していくとき。それに引きずられるように自律神経のバランスが乱れて、体のあちこちにひずみが出てくるといわれています。

更年期の比較的初期の症状のほとんどは、ホルモンのアンバランスを背景にして起こる自律神経失調が原因だといわれています。

 

不安定になっている自律神経に、さらなる負担が……

体内バランスを整える働きをする自律神経は、とてもデリケート。ストレスや気温の変化などちょっとしたことで乱れやすいことが知られています。

 朝晩の冷え込みが厳しく外気温と暖房の効いた室内との気温のギャップが大きい冬は、体温を一定に保とうとして自律神経が過剰に働きます。

また自律神経は気温の変化に合わせて血管を収縮させたり拡張させたりして全身の血流をコントロールしていますが、寒暖差があると血管の収縮・拡張を繰り返すために自律神経の機能が乱れてきます。

こうした気温への対応が、女性ホルモンの低下ですでに不安定になっている自律神経にさらなる負担をかけ、冬はホットフラッシュや冷えのぼせなどの更年期症状が強く出ることがあるといわれています。

 

「うつっぽい気持ち」が強くなる人も

また、ホルモンバランスが大きく変動する更年期には、誰でも少なからず気分の落ち込みがあるといいます。

「冬季うつ」という言葉があるように、日照時間が短く太陽光を浴びることが少なくなる冬は、精神を安定させるセロトニンの分泌量が減少し、気分の落ち込みやイライラ、やる気がでないといった精神的な症状がでやすいといわれています。

こうした冬のセロトニン不足が、更年期特有の「うつっぽい気持ち」をさらに増幅させてしまうことがあるようです。

 

血行不良が招く不調

 もう1つ、冬に更年期症状が悪化する要因に上げられるのが、寒さによる血行不良です。

寒いときには血管が収縮して血行が悪くなるために、冷え性が悪化したり、首や肩のこりがつらくなったり、また手指の関節痛がひどくなったと訴える人も増えてくるといいます。

加えて、年末年始は生活リズムの崩れなどから更年期の症状が強く出やすいときだといえます。

 

心がけたい養生ポイント

仕事や家事、介護など公私ともに忙しい更年期は、ついつい頑張って自分のことを後回しにしがちです。

更年期症状が悪化しやすいこの時期は、なおさら意識的に養生を心がけて心身のバランスを整えていきましょう。以下のようなちょっとした心がけが大事です

 

(1)首、手首、足首、おなかを温めよう

 体を冷やさない工夫を。首や手首、足首、おなかなどを温めることで、効率よく全身の血液を温めることができ、体全体が温まるといわれています。

 

(2)ぬるめのお風呂でリラックス

自律神経を整え、冷えた体を温めるには38~40℃のぬるめのお湯にゆったりつかることが効果的だといわれています。

熱いお風呂に入ると一時的に体温が上がりますが、その後急速に体温を下げようとする機能が働くために、湯冷めしたり体が芯まで温まらないといいます。

 

(3)朝は太陽光を浴びよう

 朝日を浴びることで、気分を安定させて自律神経を整えるセロトニンの分泌が促されます。日照時間の短い冬は、目覚めたらカーテンを開けて意識的に朝日を浴びましょう。

 

(4)食を大切に 

旬の食材や肉や魚などのたんぱく質、納豆やヨーグルトなどの発酵食品、ホルモンバランスを整えるといわれている大豆製品やビタミンE(アボカド、ナッツ類など)、ビタミンB(玄米、鮭など)、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。

 

(5)体を動かそう

冬は運動不足になりがち。手軽にできるウォーキングがおすすめです。血行を促進する効果もあります。通勤時や買い物に行くときには速足で歩くことを心がけたり、ちょっと遠くのコンビニに行って今より10分歩く距離を伸ばしてみましょう。

エレベータやエスカレーターを使わずに階段で上り下りをする、すき間時間にラジオ体操やストレッチをするなどがおすすめです。

 

(6)リラックス時間を持とう

 仕事も家事も完璧を目指さず、上手に手抜きをしましょう。1日30分でも良いから、自分だけのリラックス時間を持ちましょう。

 

 いかがでしたか? どのポイントも継続して行うことが大事です。できることから1つずつ始めていきましょう。 

 

<参考>

※「更年期障害 これで安心」(小学館 監修/堀口雅子)

※「寒いのに暑い? 秋冬は更年期の不調が悪化する」(漢方ライフ/薬日本堂株式会社)

※「更年期の体温調節トラブルとは? ―不快感や健康リスクに備えようー」(Menotech Life/クラシエ株式会社)

※「お風呂に入っても温まらない?冷え性(冷え症)を改善する入浴のコツ」(楽しむ・学ぶ/養命酒株式会社) 

※「寒暖差疲労とは」(一般社団法人 奈良県医師会)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。