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中年期の欠食習慣はフレイルのリスクに?

「フレイル(虚弱)」なんて、まだ先の話、高齢者の問題でしょ!……なんて思っていませんか? 

働き盛りの中年期に食事を抜くと、高齢期にフレイルになりやすいことが分かったといいます。どういうことでしょう。

 

高齢者の1割近くが「フレイル」?

「フレイル」は、英語の「Frailty(フレイルティ)」をもとにして考えられた言葉で、日本語では「虚弱」とか「脆弱」などの意味があります。

厚生労働省によれば「フレイル」とは「健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体機能や認知機能の低下がみられる状態」をさします。

簡単にいえば「加齢によって心身が衰え、脆弱になった状態」だそうです。

そんなフレイルですが、東京都健康長寿医療センター研究所の研究によれば、65歳以上の高齢者の8.7%が「フレイル」に、40.8%が「プレフレイル(虚弱の前駆状態)」に該当するということです。

性別では、男性の7.4%、女性の9.6%が「フレイル」に該当。「プレフレイル」は男性38.1%、女性42.8%で、どちらも女性に高い傾向がみられました。

 地域ブロック別でみた「フレイル」の割合は、北海道・東北で5.7%、関東8.0%、中部8.0%、近畿9.8%、中国・四国8.4%、九州・沖縄10.7%で、わずかですが西高東低(東は低く、西は高い)の傾向があるようです。

 

中年期の欠食はフレイルのリスクが2倍以上

「いや、心配ご無用。今はまだそんな年齢じゃないから」などといった人もいらっしゃるでしょう。

そう思うのも当然です。心身の虚弱とはまだ無縁の世代から見たら、「フレイル」は現実感を伴わない話ではあります。

ただ当然ながら、ある朝、目覚めたら自分はフレイルになっていた……などということはあり得ません。

若いころからの不規則な生活習慣の積み重ねがフレイルのリスクを高めるといわれたりもします。

そんなことを示す例が、このたび国立長寿医療研究センターから公表されました。

 研究グループは高齢期(65歳以上)前の食習慣に注目。壮年期(25~44歳)から中年期(45~64歳)に「1日3食」を食べてきたグループを1.00とした場合、壮年期のみ欠食(1日2食以下)したグループが高齢期にフレイルになるリスクは1.10倍、中年期のみ欠食の場合は2.18倍、壮年期から中年期に欠食した場合は2.35倍、それぞれフレイルを発症するリスクが高かったことが示されたといいます。

 

中年期の欠食習慣は影響が大きい?

 また、中年期に欠食していた人は、その後に欠食習慣を改めてもフレイルを発症するリスクが2.96倍も高いことも分かったということです。

さらに中年期に欠食習慣があり、かつ高齢期に多様な食品を食べていない場合、フレイルになる確率が2.54倍も高いこと、逆に中年期に欠食の習慣があっても、その後にさまざまな食品を食べている人は、フレイルになるリスクが1.35倍に抑えられることも分かりました。

 研究グループによれば、欠食の要因には最近、問題になっている女性に多い「やせ願望」のほか、「不規則な生活習慣」「経済的事情」など、さまざまな事情があると指摘しています。

欠食によって空腹時間が長くなると、一気食いや不規則で栄養バランスを欠いた乱れた食生活を招き、そのぶん生活習慣病になりやすく、フレイルのリスクも高まるともいいます。

 

1日3食が将来のフレイル予防には重要か?

最近の朝食事情はどうなっているのでしょう。

農林水産省の「食育に関する意識調査報告書(令和7年)」によると、「朝食をとらない」人の割合は若い世代(20~39歳)が多く、「ほとんど食べない」女性は14.5%、男性は27.8%、「週に2~3日食べる」は女性が10.2 %、男性が7.7%でした(国の「第4次食育推進基本計画」では、「欠食」は「週に2~3日食べる」と「ほとんど食べない」を合計)。

40代をみると「ほとんど食べない」女性は8.5%、男性17.4%、「週に2~3日食べる」女性は5.0%、男性9.0%でした。

50代では「ほとんど食べない」女性は5.0%、男性11.7%で、男性の欠食率の高さが目立ちます。

 逆に高齢になるに連れ男女ともに朝食を「ほとんど毎日食べる」割合が増加。50代では男女とも8割近く、60~70代では8~9割にもなります。

 ただ朝食をごはんやパン、麺類などの主食だけですませている人が6割といった調査もあります。なかには牛乳やジュースだけといったケースも。

 将来のフレイル予防には、1日3回の食事が最低の要件かもしれません。

 

<参考>

*「日本人高齢者全体のフレイル割合は8.7%:全国規模の訪問調査から判明」(東京都健康長寿医療センター研究所)

*「フレイルとは」(公益財団法人長寿科学振興財団)

*「中年期の欠食習慣 フレイルのリスク 倍増」(東京新聞/2025.10.21)

*「若い世代の食事習慣に関する調査(2019年)」(農林水産省)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。