
熱中症対策での水分補給、それで大丈夫?
猛暑が日常になった日本の夏。
ケタ違いの暑さから身を守るために大切なのが水分補給ですが、なかには逆効果となるようなケースも。
熱中症予防のポイントを整理してみました。
熱中症の救急搬送は毎年約10万人
救急車のサイレンを耳にするたびに「また誰かが熱中症?」と思ってしまうほど、いまでは熱中症は夏のポピュラーな健康障害になっています。
総務省消防庁の発表によると、2024年の5月~9月にかけて全国で熱中症により救急搬送された人は累計で9万7,578人でした。
1日あたり650人余りが救急搬送されたことになります。
このうち死亡したのは120人、入院が必要な「重症」「中等症」が合わせて3万3,372人でした。
年齢別では、65歳以上の高齢者が5万5,966人で全体の57.4%を占めています。次いで18歳以上65歳未満が3万2,222人(33.0%)、18歳未満は9,390人(9.6%)でした。
場所別では、意外にも住居がもっとも多く3万7,116人(38.0%)、次いで道路が1万8,576人(19.0%)、屋外の競技場やコンサート会場が1万2,727人(13.0%)、道路工事現場や農作業などの仕事場が1万2,202人(12.5%)などとなっています。
体の水分が失われる前に水分補給を
熱中症の予防といえば、大切なのは水分補給です。
人間の体はほとんどが水でできていて、大人の場合、体重の約60%を占めるといわれます。子どもは大人に比べて水の占める割合が大きく約70%だそうです。
この割合を維持できないと脱水状態におちいり、全身にさまざまな機能障害が起こるといいます。
例えば、体の水分を5%失うと脱水症状や熱中症などの症状があらわれ、10%失われると筋肉のけいれん、各臓器や組織への血液を巡らせることができない循環不全などが起こり、20%失われると死に至るといわれます。
一般的に1日に必要な水分摂取の目安は、少なくても1.2ℓといいます。ただ暑い時期は汗などでたくさんの水分を失うので、通常よりさらに水分の補給が必要になります。
「のどの渇きは脱水の証拠」などともいわれています。
のどに渇きを感じる前に水分を摂取することが大切です。
日頃の水分補給は水かお茶でよい?
でも、この水分補給に、ちょっとした勘違いがあるといいます。
夏の水分補給は「スポートドリンクがいい」と思っている方も多いかもしれませんが、暑い時期でも日頃の水分補給は、水かお茶(麦茶がおすすめ)で十分といいます。
スポーツドリンクは、「下着を変えたくなるほど大量に汗をかく場合」に適している飲料だそうです。
塩分のほか糖分が多く含まれているスポーツドリンクは、日常的な水分補給には向いていないといいます。
むしろ飲み過ぎによる高血糖やペットボトル症候群(激しいのどの渇き、倦怠感、イライラ、意識障害などがみられる健康障害)が心配だそうです。
また、緑茶やコーヒーなど、カフェインを含む飲み物には利尿作用があり、体内の水分を排出してしまうので水分補給には不向きのようです。
ビールやサワー、冷酒などのアルコールは、当然ながら水分補給にはなりません。逆に利尿作用によって脱水状態におちいりやすくなるといいます。
「塩バナナ」は熱中症予防に効果あり?
牛乳は熱中症予防の効果が期待できるそうです。
含まれているタンパク質の作用で血管内に水分を取り込み血液を増やすので、体温調節がしやすくなるのだそうです。
ただし、熱中症になったときは、逆に体温を上げてしまうので飲むのは避けるべきだといいます。
経口補水液はスポーツドリンクと間違われやすいのですが、塩分が多く、糖分が少ないので、体内への吸収がスポーツドリンクよりも早く、ぐったりとして熱中症が疑われるときの応急処置に向いているといいます。
水分ではありませんが、最近、工事現場などでは「塩バナナ」が熱中症予防に活躍しているようです。
バナナに軽く塩をかけるとバナナの豊富なカリウムと塩分が熱中症予防に効果的だそうです。
塩をふったスイカや梅干しなども予防に有効といいます。冷たいみそ汁もいいようです。
ただ、熱中症予防の基本は食事といいます。
水分は食事からも取ることができます。
とくに朝ごはんを食べない人は熱中症になりやすいそうです。
二日酔いや寝不足の人、糖尿病などの持病のある人も要注意といいます。
熱中症かなと思ったら、涼しい場所で体を冷やし、迷わず救急の要請を!
<参考>
*「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」(総務省消防庁)
*「熱中症を防ごう Ver.2」「STOP!熱中症クールワークキャンペン」「健康のため水を飲もう講座(厚生労働省)
*「牛乳は『熱中症』を防いでくれる強い味方です!」(一般社団法人 Jミルク)
*「子どもの水分補給 ポイントは」(東京新聞/2025.7.23)