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【NEW:4/28更新】「高血圧」は現役世代も無関心ではいられない?

「高血圧」といえば、今では知らない人がいないといっていい、いわば「国民病」。でも、なかには「まだ自分には関係ない」と思っている人も。

「サイレントキラー」の異名を持つ高血圧を相手に、本当に大丈夫ですか?

 

成人の4人に1人が「高血圧」?

 自分の血圧がどのくらいか把握していますか?

 厚生労働省の『国民健康・栄養調査(令和5年)』によると、高血圧の基準といわれる最高血圧が140mm/Hg以上の割合(20歳以上)が、男性で27.5%、女性で22.5%でした。20歳以上の国民の約4人に1人が高血圧ということになります。

 高血圧は確かに高齢者に多い疾患で、60歳以上の人の割合がほとんどを占めていますが、若い世代や壮年世代など、現役といわれる世代においても他人事ではありません。

厚労省の同調査では20代の約13%、30代の約24%が高血圧に相当し、若い世代にも高血圧が増えてきつつあるようです。

健康機器の開発・販売のオムロン・ヘルスケアの意識調査(2019年)でも、30代では男性の24.4%、女性の6.0%、40代では男性29.9%、女性15.4%、50代では男性46.4%、女性26.9%が「血圧高め」を指摘されたと答えています。

 

血圧とは血管内壁にかかる圧力のこと?

そもそも血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の内側の壁を押すときの圧力のことで、心臓がポンプのように広がったり、縮んだりを繰り返すことで起こります。

血圧の値は、心臓が血液を送り出す力、心臓から送り出される血液量、血管の収縮の程度や弾力性などによって決まります。

最高血圧(収縮期血圧)は、血液を押し出そうと心臓が収縮して血管にもっとも圧力がかかったときの値で、「上の血圧」といったりします。

最低血圧(拡張期血圧)は、心臓が広がったときの血管にかかる圧力のことで、「下の血圧」ともいいます。このときは心臓から血液は出ません。

 血圧は、心臓から送り出される血液の量が多かったり、血液の粘性度、血液が通る動脈が細かったり、硬かったりすることで決まるのだそうです。

 

「血圧高め」を指摘されるも半数が受診せず

 高血圧の基準は、診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上の場合、あるいは両方を満たすと高血圧と診断されます。

高血圧は、これといった自覚症状がないので放置されがちといいます。

気づかないうちに血管の内壁が分厚くなったり、血管の柔軟性、弾力が失われるなど、動脈硬化が進行して、脳卒中や心疾患、腎臓病などの重大な病気を引き起こす危険が高くなるともいわれます。

 先のオムロン・ヘルスケアの別の調査(2017年)では、健康診断で「血圧が高め」と診断されても2人に1人は医療機関を受診しないといいます。

さらにその中の30代の男性の30.6%、女性の34.1%は、受診や生活改善をせず、「血圧が高め」を放置しているのでした。

 また、同調査によると、例えば「高血圧が脳や血管、心臓関連の病気を引き起こすリスクがある」ことを「知らない」人が、30代男性で66.7%、女性で53.4%、40代男性で60.4%、女性51.0%で、30代、40代の半数以上が血圧に関する知識が不足していることが分かったそうです。

 

「血圧高め」でも食塩量は気にしない?

 高血圧は、食事などの生活習慣や肥満と深い関係があることはよく知られています。

例えば、濃い味付けの食べ物を好む、ラーメンなどのスープを飲み干す、外食が多い、ハムなどの加工食品をよく食べる、満腹になるまで食べる、野菜はあまり食べない、運動不足、喫煙の習慣、酒の飲み過ぎ、ストレス過多……といったことが高血圧のリスクになるといいます。

オムロン・ヘルスケアの調査(2019年)によると、高血圧を指摘された30~50代の人が弁当や惣菜を買うときに、「成分表示」で「食塩量」を確認する割合は、わずか13.2%。1位は「エネルギー」で全体の約半数。「血圧高め」でも、9割近くの人は「食塩量」をあまり気にしないのでした。

 さらに、「血圧が高め」と指摘された場合でも、毎日、血圧をはかる人は、わずか14.9%。定期的にはかっていない人は74.2%。理由の4割以上が「めんどうだから」で、「毎日はからなくても問題ないと思う」も約3割でした。

 高血圧には自覚症状がほとんどないので、家庭で毎日、朝と夜の2回、座って測定するのが自分の健康状態を知るには重要といわれます。少なくとも朝の測定は毎日の習慣にするのが大切といいます。

 何しろ相手は名うての「静かなる殺し屋」……ゆめゆめ油断召さるな!

 

 

<参考>

*「高血圧の話」(特定非営利活動法人日本高血圧学会・日本高血圧協会)

*「30~74歳の男女1万人に聞く~高血圧に関する意識と行動に関する1万人実態調査(2017.3.21~3.23)」「30-50代ビジネスパーソン6000人に聞く~『ストレス/睡眠/食生活と、高血圧』に関する調査(2019.2.4~2.13)」(オムロン ヘルスケア株式会社)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。