
【4/14更新】「オーラルフレイル」は高齢者だけじゃない?
「オーラルフレイル」というのだそうです。咀しゃくなど、お口の衰えのことをそう呼ぶといいます。「フレイル」というと高齢者を連想しがちですが、現役世代も油断できないようです。どういうことでしょう?
そもそも「フレイル」って何?
最近、よく耳にする「フレイル」という言葉。そもそもどんなものなのでしょう?
「フレイル」とは英語の「Frailty(フレイルティ)」を語源としてつくられた言葉で、「虚弱」とか「こわれやすい」といったことを意味するそうです。
年を重ねれば、たいがいの人は心身の活力が低下してきます。それとともに体重の減少や筋力などの運動機能の低下、気力や認知機能、社会とのつながりなどが衰えた「フレイル」におちいりやすくなります。
といっていきなり介護が必要な状態になるわけではなく、食事や運動、社会参加などによって改善が期待できることから、「フレイル」は「健康」と「要介護」の中間の状態といわれています。
お口と心身の機能が衰える?
そんななか、さまざまな「フレイル」がいわれるようになりました。
「オーラルフレイル」というのもその1つです。
お口(オーラル)の「虚弱」(フレイル)ということになりますが、どういったことかというと、例えば「滑舌が悪くなった」「食べこぼしが増えた」「硬いものが食べにくい」「お茶や汁物などでむせる」といった、お口の機能のささいな衰えがみられたら、オーラルフレイルだそうです。
オーラルフレイルを放置しておくと、口の中の感覚や咀しゃく、嚥下、唾液の分泌といった口腔機能、さらには心身機能も低下するといいます。
オーラルフレイルになった人は、ならなかった人に比べて、4年の間に身体的フレイルになる割合が2.4倍、サルコペニア(筋肉量の減少、筋力の低下)が2.1倍、要介護認定が2.4倍、死亡リスクが2.1倍高いといった研究データもあります。
現役世代も無関心ではすまない
オーラルフレイルは多くが加齢に起因するといわれることから、高齢者だけの問題と思われがちですが、若い世代や中年世代もオーラルフレイルと無縁とはいえないようです。
東京科学大学(旧東京医科歯科大学)と大手菓子メーカーのロッテが行った調査によると、18歳〜39歳の18.6%、40歳〜64歳の28.3%が「オーラルフレイルのリスク」を抱えていることが分かったといいます。ちなみに65歳〜74歳では35.7%、75歳以上は53.3%でした。
調査チームによれば現役世代の中には「幼少期から噛み合わせや発音の問題」を抱えていたり、「若い時期は歯科医院に通院することが少なく、自身の口腔機能の低下が見えにくい」のではと分析しています。
また、40歳を過ぎると歯周病が増え、噛む力が衰え始めるという研究結果もあることから、調査チームは、「40歳を超えたら自身のオーラルフレイルを意識して、口腔機能の低下を招かないように取り組んでほしい」としています。
「ささいな衰え」が病気のリスクに?
オーラルフレイルは年齢を問わず、誰にでもそのリスクがあることがわかりました。自分で簡単にチェックできる『チェックリスト』も関係する学会や医師会、自治体などから公表されています。
例えば、「むせる」「食べこぼす」「柔らかいものばかり食べる」「滑舌が悪い」「歯が少ない」などのような様子に気づいたら、オーラルフレイルを疑って歯科医師に相談してみてはいかがでしょう。
はじめは「ささいなお口の衰え」ですが、見て見ぬ振りを続けるうちに、後戻りできない「重大な病気」を引き起こすことになるかもしれません。
「お口は命の入口」とか、「老化は口からはじまる」ともいわれます。お口の機能の維持とオーラルフレイルの予防のためには、「しっかり噛んで」「食べて」、積極的に「外出して」、お友達と「しゃべって」、そして「笑って」「歌って」……そんな特段「代わり映えしない」日常が大切のようです。
<参考>
*「フレイルの原因は?」(国立長寿医療研究センター)
*「オーラルフレイルを知っていますか?」(一般社団法人 日本老年歯科医学会)
*「高齢期における口腔機能の重要性」(東京都健康長寿医療センター研究所)
*「オーラルフレイル」(公益社団法人 日本歯科医師会)
*「噛むこと研究室/噛むことインタビューNo.44」(株式会社ロッテ)