
疲労感は体の変調を知らせるアラーム?
「疲れた」が口癖になっていませんか? 「疲労」を日々感じている人はかなりの数にのぼるといいます。軽視すると重大な健康リスクにつながりかねない「疲労」について考えてみました。
日本人の8割が「疲れている」?
日本中が「身も心もクタクタ」「もう起き上がれない」ほどに疲労困憊しているんじゃないか?……そんな不安さえ覚えてしまうほどです。
一般社団法人日本リカバリー協会が行った大規模調査『日本の疲労状況2024』による数値。
なんと女性の80.4%、男性の76.1%が「疲れている」と回答しています。同協会によると、これは日本の20~70代の人口のおよそ8割、7,000万人を超える人たちが疲労を訴えている計算になるといいます。
特に20~40代の「疲労状況」は顕著で、20代の86.2%、30代の87.4%、40代の85.5%が「疲れている」としています。
なかでも女性の「疲労」は深刻です。
20代の89.7%、30代の90.8%、40代の87.8%と、約9割の女性が「疲れている」というものでした。
「疲労」とは「活動能力の減退状態」
「疲労」には、主にスポーツや労働などで体を動かしたことによる「肉体疲労」と、仕事で頭を使ったり、人間関係に心を砕いたり、過度なストレスが主な原因となって起こる「精神疲労」などがあるといいます。
「疲労」について、一般社団法人日本疲労学会は、「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望をともなう身体の活動能力の減退状態である」と定義しています。
例えば、激しい運動や長時間の作業、過度のストレス、病気などの状況に置かれたときなどには、「しんどい」とか「だるい」「休みたい」といった感覚になります。
それとともに思考力や注意力の低下、脱力感をともなうなど、活動量の低下がみられるということです。
「疲労」は体が発する「休め」のサイン?
こうした体からのさまざまなサインを「疲れているだけ」「眠ればなおる」と軽くみていると疲労が蓄積。慢性的な疲労から健康を害することになり兼ねないといいます。
過去には「一晩眠ればなおる」の類いで、安静や休息によって疲労の大半は回復する時代もあったようですが、今では疲労の質が変化して、寝ても解消できない慢性的な疲労が広がっていると専門家は指摘しています。
疲労が蓄積すると体や心にさまざまな症状があらわれるといいます。
例えば「思考力や注意力、集中力の低下」「刺激への反応の低下」「動作が緩慢」などの他、「目のかすみ」「頭痛」「肩こり」「腰痛」などもみられるようです。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病の原因にもなるといいます。
「ただの疲れ」と侮れない怖さが疲労には潜んでいるのです。
こんなことから「疲労」は体の変調のサイン、「休め」のアラームといわれます。
疲労の軽減には「どうする?」
質の良い睡眠をとることが疲労回復にもっとも効果的とされています。
といってただ寝ればいいわけではありません。
休日に一日中、布団の中でゴロゴロ過ごし、結果、余計に疲れてしまったといった経験をお持ちの方も多いのでは? やはり規則正しい生活リズムが大切といいます。
朝は毎日同じ時間に起き、栄養バランスのとれた食事に、夕食は就寝の3時間前にすませて、スマホは就寝数時間前に電源を切る……など、当たり前すぎて「耳タコ」になっているこうしたことがやはり基本のようです。
また、鶏の胸肉に多く含まれている栄養素のイミダゾールジペプチド(イミダペプチド)は抗酸化作用や抗疲労作用があるといいます。
ビタミンB1は豚肉やウナギなどに含まれ、疲労回復の切り札として有名です。ビタミンEは疲れの原因の活性酸素をおさえる抗酸化作用があるとされます。
ウォーキングなどの軽い運動も疲労軽減と同時に睡眠の質を上げる効果があるそうです。逆に激しい運動は活性酸素を増やすといわれます。
疲労の回復にはこれら「栄養」「運動」に加えて、「休養」が必要といわれます。体を休める以外に趣味などで気分転換をするのもいいそうです。
ただ、頑張りすぎて疲れを余計に背負いこまないように注意です。
<参考>
*「日本の疲労状況2024」(一般社団法人 日本リカバリー協会「ココロの体力測定/2024.4.25~5.30・全国の20~79歳の男女各5万人対象)
*「疲労とは?疲労の原因と回復方法」(公益財団法人長寿科学振興財団)
*「疲れが取れないのはなぜ?疲労回復のポイント」(アリナミン製薬株式会社)
*「国民的課題として取り組む疲労研究~客観的疲労の評価法~」(臨床検査学教育Vol.10/一般社団法人日本臨床検査学教育協議会)
*「鶏肉に含まれるイミダゾールジペプチドとその機能性について」(独立行政法人 農畜産業振興機構)